輪島中校庭から土砂、車埋まる 奥能登豪雨で輪島市中心部 震災の地割れから流出
●市が対策も効果なく 輪島市中心部の一角で、道路や車、家が土に埋まり、住民が途方に暮れている。21日の豪雨に伴い、元日の地震で地割れが起きた輪島中グラウンドから土砂が流出したためで、高さは最大で約1メートルに及ぶ。市の委託業者が撤去を急いでいるものの、完了のめどは立っていない。「地震の後に直したものが全部だめになった」。度重なる災難に、被災者の心身の疲労はピークに達している。 【写真】震災で地割れができ、豪雨で土砂が流出した輪島中グラウンド=25日午後4時45分、輪島市河井町 輪島市杉平町の谷口建築設計事務所では、建物の周囲に60センチ~1メートルの土砂がたまった。所長の谷口寛さん(74)によると、避難先から戻った際には道路に面した玄関や事務所の入り口が全てふさがれており、中に入ることができなかった。 谷口さんは、金沢から応援に来た長男とともに堆積した土砂を何とか取り除いたものの、ドアを開けた先にも泥水が入り込んでいた。「正月の地震で壊れた床暖房やパソコンを4月に全て直したのに、まただめになった」。谷口さんはうなだれた。 隣接する嘉門内科クリニックは、倉庫として使用しているコンテナやボイラー、マイカーが土砂に覆われ、近くの駐車場に止めてあった車や公費解体現場の重機にも被害が出た。嘉門信雄院長(69)は「医院を開いて30年近くになるが、こんなに土砂が流れてきたことはない」と驚きを口にした。 市教育委員会によると、輪島中グラウンドは約1万6千平方メートルで、能登半島地震で全体の半分ほどが崩れた。割れた部分から土砂が流れ出やすい状況で、9月上旬にまとまった雨が降った際は、周辺の市道に約50センチの土砂が積もった。 これを受け、市は流出を食い止める土のうを置き、仮設の配水管を設置する対策を講じたものの、記録的大雨の前では効果がなかった。周辺住民からは「危険は目に見えていた」「市の対応が悪い」と不満の声も聞かれた。 これに対し、市教委の担当者は「被害を受けた方におわび申し上げる。さらに被害が拡大しないよう対策を講じていきたい」と話した。