「被災してES書けない」熊本地震で焦り募る地元就活生たち
熊本地震が、学生の就職活動にも大きな影響を与えている。地場企業の多くが被災。中には工場が損壊して操業休止に追い込まれているケースも出ている。熊本県外では通常通り採用活動が進んでおり、地元就職を希望する県内の学生らは「これからどうなってしまうのか」と焦りを募らせる。 【写真】熊本県河原小学校避難所、「うちは『待つだけの避難所』ではなか」
中小が多い地元企業、採用活動に影響
4月14日、16日と2度の大きな揺れが襲った熊本地震。民間企業の99%を中小企業が占める熊本県では、小売業や製造業を中心に、営業、操業休止が続出した。日本政策金融公庫には、発災から1か月間で、融資や返済に関する計2785件(熊本、大分両県)もの相談が寄せられた。 今回の地震は、企業の採用活動も直撃した。2017年卒業予定の大学生を対象とした採用情報の公開は、今年3月に解禁、選考は昨年より2カ月前倒しの6月開始予定となっている。採用情報の公開は昨年と同じタイミングであるため、県内では4~5月に会社説明会やエントリーシート(ES)の受け付けが集中していた。 しかし、地震を受け「採用どころではない」(県内の食品関連企業の採用担当者)状況となった。県内の金融機関の男性支店長(43)は、「先々の経営の不安からか、零細企業を中心に従業員を解雇する動きがすでに出ている」と危機感を募らせる。
「優秀な学生を逃してしまう」企業に不安
県内で就職情報誌や経済誌を発行する「地域経済センター」(熊本市中央区)は、過去5年間に新卒採用の実績のある、県内に事業所を置く企業を対象に、緊急アンケートを実施。約300社へ郵送し、うち約100社からFAXで回答を得た(5月19日時点)。 アンケートによると、採用活動を「中止した」と回答した企業はなかったものの、説明会の延期や県外への会場変更などの対応を取った企業が一定数あった。また、採用自体を「未定」とする回答も複数みられた。 アンケートを担当した同社就職情報部の佐藤元之さん(53)は、「被災した企業は、事業の立て直しで手一杯。採用どころか、1~2年間は業績の見通しが立たないという企業もある」と、県内企業の置かれた立場を説明。「採用意欲はあっても物理的に採用活動に人員を割けない企業は、『優秀な学生を取りこぼしてしまう』と焦っている」と、採用担当者らの苦しい胸の内を代弁する。 一方で、地銀やカーディーラーなど、毎年まとまった人数を採用している企業については、「採用の仕組みが完成しており、なんとか採用活動を進められている」といい、建設やインフラ系の企業については、「業務量が激増しているために採用まで手が回っていない。夏か秋ごろに仕事が落ち着いていれば、採用活動を開始する企業も出てくるのでは」と予想する。