【Q&A】せっかく発電したのにもったいない。再エネの「出力制御」ってなに?
電気は需給バランスが崩れると大変、現在は火力発電が調整弁
スマートモビリティに欠かせないのが「電気」。EVなどの電動車両は言うに及ばず、デジタル社会は安定した電力供給がなければ成り立たない。太陽光や風力による再エネの導入も拡大しており、いまや日本の電力の2割強は再エネ(再生可能エネルギー)で賄われている。ところが、再エネ電力はやみくもに増やせるわけではない。実は各電力会社は「再エネの出力制御」を行っている。なぜそんなことが必要なのだろうか。 【写真】出力制御の状況をわかりやすい図解で見る 電気代の高騰が続いているが、一方で燃料代がかからない再エネの発電を止める「出力制御」も行われている。“このご時勢にもったいない”という声もあるが、せっかく発電したのに、なぜそれを利用しないのだろうか。 電気の特性を思い出していただきたい。「電気は生産する量と使う量がイコールでなければならない」という大原則だ。電気は必要以上に発電しても、余ったぶんは(電池などに蓄えられなければ)“捨てられる”のである。つまり、送電網から遮断されるのだ。これは火力、原子力、地熱……そして再エネを問わず、余剰電力の活用はごくわずかだ。 送電線や変圧器に流すことができる電気の量に上限がある。需給のバランスを超えた電気を流すと、電流の周波数(東日本は50Hz、西日本は60Hz)が乱れたり、最悪の場合は大規模停電が発生してしまう。 そこで各電力会社は、需要に合わせて、電力供給量をオンデマンドで調整している。電気の使用量(総需要)は一日の中でも常に変動しており、リアルタイムの調整が行われているのだ。さらに季節的な変動もあり、気候の良くなる春と秋に電力需要は減少する傾向にある。 現在、その調整弁として機能しているのが火力発電だ。水力、原子力、地熱は出力を短時間で小刻みに調整することができないので「長期固定電源」と呼ばれている。一方、石油/ガス/石炭などによる火力発電は、火力の調整が比較的容易なので従来から需給調整弁としての役割を担っている。つまり、日常的に「出力制御」を行っているのだ。