習主席の曖昧な国債発言、QE観測招く-人民銀はFRBに近づくか
(ブルームバーグ): 中国の習近平国家主席が昨年行った講話がここにきて再登場し、市場の流動性を調節するために中国当局が国債の売買を始める可能性が示された。米連邦準備制度など主要中央銀行も用いた手段の活用観測を後押しする形となっている。
中国人民銀行(中央銀行)に対し、公開市場操作で「国債の売買を徐々に増やす」よう呼びかける習主席の発言が先週意識され、トレーダーの間でさまざまな臆測が飛び交った。昨年10月にまず発せられ、最近になって新刊本や新聞記事で取り上げられた同コメントは、2007年以降大規模な国債買い入れを行っていない人民銀にとって、政策転換を示唆する可能性がある。
中国の政府機関に助言するシンクタンク、国家金融・発展実験室のリウ・レイ研究員は「一般的に他国の中銀はマネー発行の基礎として、国債や国家の信用力を活用している」とした上で、「これは人民銀と通貨システムの現代化にとって必要な道だ」と語る。
習氏の曖昧なコメントを受け、一部のトレーダーからは当初、中国が国債などの資産を購入して利回りを押し下げ、景気を喚起する非伝統的な刺激策である量的緩和(QE)を検討しているのではないかとの見方も出た。日本銀行が20年以上前に初めて採用したQEはその後、世界金融危機や新型コロナウイルス禍で米金融当局なども活用した。
中国経済の苦境に伴い、不動産など一部セクターを下支えするために思い切った政策が検討されるのかどうか、この数カ月にわたりさまざまな議論が交わされてきた。人民銀はすでに対象を絞った貸し出しプログラムを進めており、中銀のバランスシートを拡大させるという意味でQEに例える見方もある。
一部のエコノミストは、習主席による国債取引の呼びかけを画期的な政策転換と解釈することには慎重だ。
理由の一つとして、習主席は「売買」と発言しており、買いと売りの両方に言及している。一般的に、国債やその他の資産を大規模に買い入れ、保有するQEとは明らかに異なる。また、中国の金利はなおゼロを大きく上回っており、短期金利の引き下げ余地がなくなった場合に、需要を喚起する緊急手段と通常見なされる選択肢を人民銀が検討する動機も乏しい。