学校給食「自校式」「センター式」 併存する静岡県内、それぞれの特徴は?
公立小中学校で給食を無償提供する自治体が昨年9月時点で約3割に上ることが、文部科学省の調査で分かった。給食を巡る制度や環境が変化を続ける中、本県では在校生の給食を校内で用意する「自校式」、給食センターが複数校に配食する「センター式」が併存する。それぞれの方式を採用する学校を訪ねた。 自校式給食の清水町立清水小。同町では小中5校がそれぞれ敷地内に給食棟を設けている。清水小では1日に560食を用意する。 ■教室と近い距離 メニューは各校で異なるが、デザートの回数や主菜の肉と魚の割合に差が出ないよう配慮されている。取材した5月28日のメニューは米飯、揚げサバのカレーソースがけ、突きこんにゃくのいり煮、すまし汁。年に3回、柿田川の湧水で育った緑米を提供するなど地元の産物を積極的に使う。食材の仕入れ業者も可能な限り県東部地域から選ぶという。 調理は委託業者が担当する。午前7時半に食材の荷受けを開始し、午前10時までに素材の下処理や調味料の計量を終える。給食は国の衛生管理基準で完成から2時間以内の提供が求められているため、火入れは給食の開始時間から逆算して実施する。午前11時55分に給食棟から料理を載せたワゴンが出発。午後0時10分に教室で給食を開始する。 給食棟と教室の距離が近いため「今日の給食はなに?」「いつもありがとう」といった言葉が飛び交う。学校栄養士の川久保美和さん(41)は出来たての温かさや、校内に広がる香りを自校式の特徴として挙げ、「何より衛生が第一。自校式、センター式に優劣はない」と話した。 ■17校に1日8500食 静岡市駿河区にある市立西島学校給食センターは、同区の小中学校計17校に1日約8500食を提供する。鉄骨造り2階建ての施設内は汚染作業区域、非汚染作業区域のほか肉・魚処理室や器具洗浄室、あえ物室など細かく区分けされている。衛生管理の観点から自校式では難しい生野菜や果物を献立に取り入れることも比較的容易だ。またアレルギー対応食も1日に50食用意できる。 委託業者のスタッフ63人が1日に3種類の献立を並行して調理する。センターは学校から離れているが、児童、生徒の意見を調理内容に反映させている。5月29日の主菜の一つ肉じゃがは、要望を踏まえ食材のグリーンピースを子どもになじみのある枝豆に代えた。 センター式の給食には「教室に届く頃には冷めている」などと負のイメージが持たれやすい。主任栄養士の松本美香さん(41)は「少なくとも静岡市では保温設備が向上しホカホカ。教室で食缶を開けたら湯気が出たという声も届いている」と話す。「センター式の主な採用理由はコスト減と衛生管理のしやすさ。その上でアレルギー対応食をはじめとした子どもらへの細やかな配慮も自校式と同じくらいにできている」と強調した。 ■静岡県内小中 過半数が共同調理 文部科学省が今月公表した学校給食の調査によると、静岡県内の公立校は小中いずれもセンター式(共同調理場方式)が半数以上を占め、自校式(単独調理場方式)を上回っている。 主食と牛乳とおかずがそろった「完全給食」を実施している県内公立小482校のうち自校式は199校(41.3%)、センター式は283校(58.7%)。公立中253校のうち自校式は79校(31.2%)、センター式は174校(68.8%)だった。義務教育学校1校はセンター式を採用していた。調査は昨年5月1日現在の状況について尋ねた。 県内では近年、湖西、静岡、裾野の各市など、自校調理場の老朽化や学校統廃合の動きを理由に、自校式からセンター式への変更を目指す動きも見られる。
静岡新聞社