水俣病患者・被害者のマイク切断で大臣が謝罪 拭えない環境省の不誠実さ
大事な部分は「ゼロ回答」
再懇談は7月8日、被害者・支援者連絡会を皮切りに始まった。環境相は一日中ほぼ休むことなく患者や被害者、支援者の訴えを聞き続けた。しかし被害者・支援者連絡会が出した要求書に対して環境省は、認定制度の見直しなど最も大事な部分はほぼ「ゼロ回答」だった。国は2004年の最高裁判決で水俣病の健康被害を拡大させた責任が確定した「加害者」だが、今もその責任から逃れるために被害を矮小化しようと、自分たち権力ある加害者の都合を被害者に押し付けるばかりだ。 そして今回の問題では環境省の誰も明確な責任を取っていない。6月30日付で、木内室長を元々所属していた厚生労働省の大臣官房付とする人事を発表したが、5カ月弱の短期間での異動にもかかわらず、環境相は会見で更迭処分ではなく「通常の人事異動の一環」だと繰り返した。また、環境省は5月8日に事務次官と環境保健部長に口頭で厳重注意をしたが、いずれも懲戒処分ではない。 長年にわたり行政が放置し、再懇談で被害者が提示した数多くの深刻な課題は今後、各団体との間での実務者協議で話し合われる予定だ。だがマイクを切らなくても、患者の声を反映させない政策ばかり打ち出すなら、国の姿勢が改善したとは決して言えない。
斎藤靖史・フリージャーナリスト