成功の裏にあった技術者の苦難 愛知が支えた「H3ロケット」の開発
2月17日に鹿児島県・種子島から打ち上げられた「H3ロケット」。歓喜に沸いた打ち上げ成功を支えたのは、“ものづくり王国・愛知”の技術だった。苦難を乗り越え、挑戦し続けた3人の技術者たちの素顔に迫る。
日本初!3Dプリンターを使用したエンジン部品製造
実は愛知県はロケット産業の中心地。飛島村の「飛島工場」では機体、名古屋市の港区「大江工場」では部品、小牧市の「小牧北工場」ではエンジンの製造が行われている。中京テレビ「キャッチ!」では、この3 拠点で活躍する技術者たちを取材した。
三菱重工の長崎茜さん(小牧北工場・取材時)は、ロケット部品を作る技術者。長崎さんが作った部品は、巨大なロケットの一番下にあるエンジンに組み込まれている。ロケットの下から自身の手がけた部品を教えてくれた長崎さん。「ちょっと見えにくいんですが、下から上に上がっている“曲げ配管”が3D造形品です。我が子のようにかわいく見えます」と試行錯誤の末に生まれた“大切な部品”への思いを語った。
長崎さんが取り組んでいたのは、日本で初めての試みとなる3Dプリンターを使ったロケットエンジンの部品製造。入社2年目で任された重要な仕事だったが、機械は思うようには動いてくれなかった。「(日本初の試みのため)先輩方からの意見を聞けずに、自分で試行錯誤で闘うしかないのが大変でした。見るからに笑顔がなくなって、食欲も出なかったです」と苦労の日々を振り返る。 当初の打ち上げ予定から遅れること約2年。ようやく打ち上げにこぎ着けたと思ったら、約1年前に経験したまさかの打ち上げ失敗。どん底からの再挑戦だった。
計算通りにいかないからこそ“面白い”
「H3ロケット」を支える技術者はほかにも。三菱重工の柴田晶羽さんだ。柴田さんは一児のママ。娘の優織(ゆうり)ちゃんの名前には、宇宙と関わりの深い“ある人物”の名前が由来していた。由来について、柴田さんは「(名前の由来は)ユーリ・ガガーリンです。ロケットつながりで。ロシアの宇宙飛行士の方で、世界で一番最初にロケットに乗り宇宙に行った人です。何でも挑戦してほしいので、この名前にしました」と明かした。