「異世界転生」に「溺愛」、マンガの“現実逃避”がメンタルに与える影響は? 心理カウンセラーが提言
■一方で子どもへの影響は?「現実にもきちんと戻れるような循環を」
異世界転生ジャンルは、死からスタートする作品が多い。もちろん、子どもたちが本気で転生を信じているわけではないだろうが、現実に絶望するあまり「ワンチャンあるんじゃないか」という発想に飛躍するリスクを浮世氏は懸念する。かつて、社会現象を呼んだ某人気コミックが、子どもたちの“自殺ごっこ”を引き起こした可能性を指摘されたこともあった。 「溺愛系も、コミックでは都合が悪いことは描写されません。でも現実では往々にして、溺愛と束縛・モラハラは紙一重。現在、デートDVやホスト狂いの問題が言われていますが、刷り込みにより『これは愛なんだ』と勘違いすることに繋がる可能性もあります。現実を捉える感覚をバグらせやすい要素を含むコミックには、フィクションであるということを伝えていく必要がありますね」 浮世氏は通信制高校の代表も務めているが、一概にこうしたジャンルが子どもたちに有害だと言っているわけではない。 「不登校やひきこもりの子たちの中には、自己紹介はできないけれど“推し紹介”はイキイキとしてくれる子がたくさんいます。ストレスフルな現代において、自己完結できるエンタメは大人にとっても子どもにとっても最良の癒しであり、メンタルヘルスにもなっています。フィクションで楽しませつつ、現実にもきちんと戻れるような循環を作ってくれればより良いと思いますね」 一定のセオリーがある「異世界転生」や「溺愛系」だが、それゆえにジャンルファンも掴んでいるようで、コミックシーモアによると「同ジャンルをはしご読みする読者が多い」とのこと。また「ストーリーに拡張性が高く、各出版社も力を入れているジャンルだけに今後も人気は継続するだろう」と見ている。エンタメは時代の写し鏡。そこには現代の生きづらさが投影されているとは言えど、適切な用法・容量を守れば、現実と上手に折り合うために欠かせないものとなっているのかもしれない。 【プロフィール】 浮世満理子(うきよ・まりこ) アイディア高等学院学院長、全心連公認上級プロフェッショナルカウンセラー/メンタルトレーナー。大阪府出身。『全国心理業連合会』代表理事。『全国SNSカウンセリング協議会』常務理事。トップアスリート、芸能人、企業経営者などのメンタルトレーニングを手掛けるほか、メディア出演も多数。『カウンセラーが悩み解決!SNSコミュニケーション』、『本当にしんどい時に読む メンタルの整え方』、『子どもの可能性を120%引き出す! メンタル強化メソッド 50』、『LINE上手 ビジネス・私生活で相手の心理をつかむ!』など、著書多数。 (文:児玉澄子)