城氏分析。延長狙いが正解?日本が越えられなかった世界の壁の正体とは何か
ただチャンスは作ったが、ゴールネットを揺らすことができず、ベルギーは、後半20分に1m94のフェライニとスピードのあるシャドニを投入してきた。「0-2」からの逆転劇は、W杯の決勝トーナメントでは48年ぶりの出来事らしいが、サッカーの世界では「最も危ないスコア」とも言われている。 攻めるか、守るかのチームメンタルやプランが、どっちつかずになりやすいからだ。後半24分にはヘッドでボールをつながれる不得意な空中戦で1-2にされると流れが変わった。さらに29分には、アザールの左のクロスからフェライニの同点ヘッド。酒井宏がアザールをフリーにし最終的にマークについた大迫が、その出所を抑えきれないという2つのミスが重なっての失点だった。お互いに長所を潰しあうゲーム展開だったが、最後は、「高さに弱い」という日本の弱点をつかれた。 “貯金”を失った西野監督は後半36分に柴崎に替えて山口、足にきていた原口に替え本田を投入する“2枚替え”のカードを切った。本田は、攻撃のタメを作り、短いパスを使って日本のオフェンスにアクセントを与えたが、守備的なボランチである山口は、攻撃のリズムをつかめずに機能しなかった。この交替が、最後の最後の本田のCKの際の、戦術プランの曖昧さにつながる布石になってしまったような気がする。2-2のスコアから、どこで、いつ攻めるか、守るか、が中途半端になってしまったのである。 日本は勝てる試合を落とした。 しかし、南米の強豪、コロンビアから金星を挙げて、アフリカのセネガルに2度追いついて引き分け、欧州の優勝候補、ベルギーを後一歩まで追いつめた。試合内容は、日本のW杯史上、間違いなく最高、最強のものだったと評価していい。たった2か月で、明確なチームコンセプトの元、選手とコミュニケーションをとり、ここまでのチームに仕上げた西野監督の手腕は高く評価されるべきだろう。1年前、いや、せめて半年前に、この体制を作り、守備におけるグループ戦術や、攻撃のコンビネーションを磨いていれば、更なる上積みが期待できただろうし、このベルギー戦の結果も、どうなっていたかわからない。 代表監督の責任やプレッシャーは相当なものだと想像するが、日本の進むべき方向性をW杯で示してくれた西野監督には、ハッキリと続投を宣言してもらいたい。そして、日本サッカー協会は、もうW杯ごとの4年のスパンではなく、若手の育成を含めた長期的な日本の未来ビジョンを西野監督と共に構築し、8年でも、12年でも長期契約を結び、腰をすえて「ベスト16越え」へ向かうべきではないか。もう日本の方向性に疑いはないのだから、要所、要所で、海外の指導者をアドバイザーという形で呼びながら、世界のトレンドを吸収していけばいいだろう。 (文責・城彰二/元日本代表FW)