【高平慎士の視点】つかみたいものをつかめる位置にいたサニブラウン 世界水準「9秒台」を再現するための道筋を
経験重ねたライルズの勝負強さ
この舞台に来たら、「ミスが出た」ではなく、「うまくいかせないといけない」ですし、9秒台を出すためのアプローチを改めて見つめ直す必要があるでしょう。 自身の持ち味をより高めていくのか、それとも課題克服することで全体のベースを上げるのか。何が通用するのか、しないのかを考えるのではなく、通用させるしかないというマインドで、取り組み方を考えていく必要があります。世界で戦うには、9秒台を持っていること、それを再現できることが大前提になるのですから。 世界の選手たちに目を向けると、しびれる決勝を見せくれたなと思います。その中で、ライルズ選手は、あれだけスタートが遅れても、やるべきことをやり続けたことが金メダルにつながりました。 一方で、キシェーン・トンプソン選手は大舞台の経験がなかったこともあって、ラストは力んでいました。どれほどの舞台で戦ってきたのか。その経験を積み重ねてきたライルズ選手だからこそ、最後に、背中をちょっと押してくれたのでしょう。 ウサイン・ボルト選手が全盛期だった頃のように、9秒6台は出ていません。しかし、若い選手が非常に多く、9秒7~8の現在の水準が0.1秒上がっていく可能性は十分にあります。そこに日本人選手がどのように挑んでいくのか。今回の決勝は「お金を払っても観たいレース」でしたが、その舞台に日本人選手が立てる日を、心待ちにしています。 ◎高平慎士(たかひら・しんじ) 富士通陸上競技部一般種目ブロック長。五輪に3大会連続(2004年アテネ、08年北京、12年ロンドン)で出場し、北京大会では4×100mリレーで銀メダルに輝いた(3走)。自己ベストは100m10秒20、200m20秒22(日本歴代7位)
月陸編集部