【遺族厚生年金の見直し】子どもがいない現役世代は「5年間」の有期給付に?!男女差は解消される方向で検討
遺族厚生年金の見直し案の内容
遺族厚生年金の具体的な見直し案について確認していきましょう。 ●子のない配偶者は夫・妻ともに5年間の有期給付 配偶者が亡くなった子どものいない20代から50代の方に対して、男女や年齢に関わらず、5年間の有期給付となります。 これまでは、夫が働き妻が家庭に入るという形態の世帯が多かったため、夫が亡くなった場合に女性が新たに働き始めることが困難でした。 しかし、現在は共働き世帯が増えており、夫が亡くなった後も働き続けることが可能なため、遺族厚生年金の支給においても、男女差を解消することが望ましいと言う理由からとされています。 ただし、実際には就労状況はまだ男女間で差がある状態であるため、妻の有期給付の引上げは20年をかけて段階的に行われる予定です。 ●「中高齢寡婦加算」の段階的廃止 「中高齢寡婦加算」も、段階的に廃止されることが検討されます。 そもそも中高齢寡婦加算は、夫が亡くなった後に、残された妻が働くことが難しかったという社会環境を受けて制度化されたものです。 しかし、現在の就労環境を踏まえると、夫の死亡後も働くことは可能なため、男女間の差を解消するために廃止すべきとの考えに基づいています。 なお、廃止による妻の経済的負担や混乱を緩和するために十分な経過措置を取るとされています。 ●現行通りのケースもある 遺族年金の見直しが行われても、18歳になった年度の3月31日までにある子どもや、障害等級1級・2級の20歳未満の子どもがいる場合は、今までと同じ給付を受けられます。 また、配偶者が亡くなったときに60歳以上だった方は、生存中はずっと遺族厚生年金を受給できます。
まとめにかえて
遺族厚生年金の見直し案が発表され、子どものいない配偶者が亡くなった場合、男女ともに5年間の有期給付になることが検討されます。 また、妻だけが給付対象であった中高齢寡婦加算が、段階的に廃止になることも盛り込まれています。 インターネット上では「遺族年金が5年で打ち切り」といった文言が散見されますが、子どもがいる場合や60歳以上に配偶者をなくした場合は、これまで通り受給可能です。 配偶者に万が一のことがあった場合に備えて、見直し案を正しく理解しておきましょう。
参考資料
・日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」 ・厚生労働省「遺族年金制度等の見直しについて」
木内 菜穂子