各地で頻繁に起こる地震…首都直下地震の懸念も 「意識としては、常に準備」専門家に聞く防災対策の見直しとは
直近で頻繁に発生している地震。「ここ最近本当に地震が多い」「あらためて備えを見直すべき」と肝を冷やした人も多かったのではないだろうか。千葉県東方沖でも群発地震が発生するなど、東日本太平洋側への警戒が強まっているなか、私たちは何を考え、何をしておくべきなのか。家族を守るために必要な防災対策について専門家に聞いた。 【画像】カップ麺が様変わり! 救援物資で足りないものを補う、究極の防災食とは?
■首都直下地震で発生が予想される「同時多発火災」延焼の危険が高くなる場所とは?
30年以内に70%の確率で起こると言われている首都直下地震。東京は政治や経済の中枢機能が集積する巨大過密地帯であるだけに、甚大な被害が想定される。中でも大被害をもたらすと言われているのが火災だ。今から約100年前の1923年9月1日に発生した関東大震災では、東京の死者・行方不明者のうちの96%が火災により命を落としたと記録されているが、現代でも、国は首都直下地震で想定される死者の7割は火災によるものと想定している。 「建物倒壊と火災の発生は密接にリンクしているため、両方に注視していかなければならない」と語るのは、日本の消防力の底上げを目的に消防戦術探求会議を立ち上げ活動している元消防士のよろず氏。よろず氏によると、地震によって火災が発生するパターンは以下の3つあるという。 (1)揺れによって倒れたストーブやてんぷら油などが可燃物に着火し火災が発生。 (2)建物の倒壊により電気系統が損傷し、短絡(ショート)が発生して火災が発生。 (3)通電時に、倒れた家具に踏みつぶされた配線などがショートしたり、電気ストーブが再起動して落下した可燃物に着火し、火災が発生(通称:通電火災)。 「(2)と(3)は建物がダメージを受けたことが原因になりますので、地震による備えでは、やはり火災とともに建物の倒壊への対策も重要となります。ただし、火災は建物の倒壊と違って、消火が行われなければ被害が拡大していくため、個人と地域での対策が重要になります」 上記3つの原因により、首都直下地震のあとに発生すると想定されている「同時多発火災」。延焼の危険が高くなるのは、地域を問わず、「古い町並み、密集地、水利がない」場所だという。 「古い町並みは延焼しやすい古い木造建物が多いため、密集地は建物が倒壊した場合、消防車両が近づけないため、水利がない場所は水がなければ火が消せないためです。具体的にどの地域が火災拡大の危険があるのかは、東京都被害想定デジタルマップで確認することができます。ただし、都市の地震では巨大な炎の渦が竜巻のように起きて火の粉をまき散らす火災旋風が発生する可能性も高いですが、いつどの方向に向かって発生するかは現代の技術でも想定することが難しいので、基本的にはやはり火災を発生させないというところに重きを置いていただけたらと思います」 火災を起こさないように、「地震時はすぐに火を消せ」と言われる一方で、近年のコンロは自動的に火が消えるため、「火の確認はせずにすぐに逃げろ」という報道もなされているが、これについてはどう考えればいいのだろう。 「どのタイプのコンロが設置されているかによります。近年のコンロは揺れを感知したり、加熱し続けたりすると自動的に火が消える設計になっていますので、火を気にすることなく、地震が起きたらまずは逃げるなど、自分の身を守ることを優先して考えて大丈夫です。そうではない古いコンロでも、例えば天ぷらを揚げていたとき、震度7の地震が発生して火を止めるために無理に近づくとやけどをする可能性があります。ガス供給をしているマイコンメーターによって揺れを感知するとガスが自動で遮断されますので、まずは身を伏せて、揺れが収まってから火を止めるという考え方でいいと思います。火が止まらない可能性も踏まえて古いタイプのコンロであれば、最新のものに買い替えるのも重要な防災の準備です」 万が一、火災が起きてしまったときは、速やかな初期消火が重要となる。そのためには、消火器を用意しておくことも必要だ。 「アパートやマンションにお住まいの方は通路に必ず設置されていますので、確認しておきましょう。また、今はインテリアの邪魔にならないオシャレな消火器が市販されていますので、一戸建てだけでなく、集合住宅にお住まいの方もそういうものも用意しておくと安心です。事業用消火器は赤と決まっていますが、一般家庭はオシャレにデザインされたものでも問題ありません。ただし、強化液消火器と呼ばれるものを選んでください」 さらに、万が一、火災が起きたときのために、「地域との連携も重要になる」とよろず氏はアドバイスする。 「消火栓に直接パイプをつけて消火活動を行うスタンドパイプという設備が存在します。一般の方でも比較的取り扱いが容易な消火設備ですが、震災発生時には、人員、設備、消防車が圧倒的に不足し、消防士が消火にすぐに行けない状態となりますから、火災の危険度が高い地域は、とくに自治体でそういったものを準備し、訓練をしておくことが大切です」 ご近所との連携は、こんなときにも命を守る重要な鍵となる。 「万が一、倒れた家具に挟まれたとき、消防士はすぐに駆け付けることはできませんので、助けてくれるのは近所の方になります。都会は隣近所との人間関係が希薄になりがちといわれていますが、両隣と人間関係を作っておくことも備えのためには必要です」