「強豪の推薦より一般受験」「単身ケニアに行ってAO入試」彼らはなぜあえて“慶應から箱根駅伝”をめざすのか…予選会直前、慶應競走部の青春
自分よりBチームのほうが伸び代がある
今年の予選会に向けて、木村自身は走れる自信を得たが、チーム全体で考えると「甘さ」が感じられたという。Bチームの選手のレベルアップが不可欠だが、より力を上げていくために、木村はあえて冷静な視線で見ていた。 「夏合宿、Bチームの選手がけっこう練習が出来ていたので『いけるぞ』と盛り上がっていたんです。でも、僕はポイントができただけで、『まだまだだろ』って舞い上がらないように釘を刺していました。予選会で僕が1分稼ぐのはキツキツだけど、Bチームのメンバーは伸び代があるので1分を稼ぎやすいんですよ。そうならないと予選会は突破できない。そのために自分に厳しく、他の選手にも厳しくしてきました」 トラックシーズンは、ほとんどレースに出場しなかったので、今回の予選会が久しぶりのレースになり、4年間の集大成の場になる。「当日は緊張すると思います」と語るが、その表情には確かな自信が感じられる。 「タイムは61分45秒に設定していますが、どんなレース展開になっても日本人3番以内、最低でも一桁の順位でいきたいとイメージしています。僕がここまで成長できたのは、慶應の競走部に入ってOBの支援などを含めた環境があったからこそだと思うので、予選会で少しでも恩返しできるような走りをしたいと思っています」 年1回のハーフで慶應を引っ張る快走を実現できるか。
秘密兵器の2年生
慶應大学には、「秘密兵器」がいる。 成沢翔英(2年)は、そう呼ばれるのに相応しい破天荒な選手だ。箱根の強豪校への入学が決まっていたが、県駅伝で大腿骨を疲労骨折して入院している時、2次の手続きとなる書類の提出と学費の振り込みを忘れてしまった。翌年の入学にするか、どうしようか考えていると、内部進学できる大学の陸上部から「うちに来い」と説得された。 「自分は付属高校だったので上には行けるんですけど、それじゃおもしろくない。自分のいいところは『そういったか』という、人と違う道をいくところだけど、進路をどうしようと考えていた時、『ビリギャル』を見たんです。『おもしろいじゃん』と思い、高3の1月に慶應に行こうと決めました」 進路を心配していた担任に「慶應に行く」と伝えると「おまえ、何、言っているんだ」と怒られた。あの映画のワンシーンのようだが、調べると慶應には9月入学があった。入試は面接と論文だけだった。
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