五感で楽しむ「京都の夏の和菓子」色や透明感で"涼の意匠"…情景や涼感が伝わる名店の生菓子5選
季節の移ろいを、素材と見た目で表現する和菓子。なかでも京菓子は、芸術の域に達する繊細な表現力で、夏の情景や涼感を求めるみやこの人々を魅了してきました。旬の素材が生み出す味わい、季節を先取りした意匠、さらには季節や行事、和歌、文学などから取り入れた美しい菓銘(かめい)の響きによって、京菓子は文字通り五感で楽しむ文化として、今日に受け継がれています。色や透明感で表現する生菓子をご紹介します。
亀屋則克|浜土産(はまづと)
1916年創業の同店の代表銘菓。密閉された蛤の貝殻を爪や楊枝で開けると、黄金色の琥珀羹が現れます。大豆を発酵・乾燥させた浜納豆の塩気と味噌風味が独特のアクセントに。(1個470円) 【亀屋則克】 京都府京都市中京区堺町通三条上ル大阪材木町702 営業時間/9時~17時 定休日/日曜、祝日、第3水曜
松彌(まつや)|うちわ
「いろは餅本店」の名で1888年に創業し、戦後、生菓子を手掛けるようになり現在の店名に。清流を泳ぐ2尾の鮎を描いたうちわは、こし餡の薯蕷饅頭。郷愁を呼び起こす一品です。(1個280円) 【松彌】 京都府京都市中京区新烏丸通二条上ル橘柳町161-2 営業時間/10時~18時 定休日/月曜、第3火曜 要予約
俵屋吉富|玉すだれ
玉すだれとは、夏日を遮り涼を演出してくれるすだれのこと。目にも眩しい錦玉の袖形が中のこし餡を包み込み、すだれを表現。古くからある意匠で、透け感がなんとも夏らしい。(1個432円) 【俵屋吉富】 京都府京都市上京区室町通上立売上ル 営業時間/8時~16時 定休日/水・日曜
老松|星逢(ほしあい)
牽牛織女二星の一年に一度の逢瀬。七夕のころの天の川を金粉で表現したロマンチックな意匠。水色の涼しげなういろうに包まれているのは、こし餡と白こし餡の合わせ餡です。(1個486円) 【老松】 京都府京都市上京区社家長屋町675-2 営業時間/9時~17時 不定休 要予約
俵屋吉富|水面(みなも)の蔭
江戸時代中期より約270年の歴史をつないできた京菓子店。澄んだ流れにそよぐ水草と青もみじを琥珀羹で包み込み、水中の岩はつぶ餡で模して涼やかな情景を描き出している。(1個432円) 【俵屋吉富】 京都府京都市上京区室町通上立売上ル 営業時間/8時~16時 定休日/水・日曜 要予約 撮影=高嶋克郎 編集・文=柏木敦子(婦人画報編集部) 『婦人画報』2024年8月号