大阪発 プリント基板で鉄道路線図表現した名刺入れ人気
大阪発 プリント基板で鉄道路線図表現した名刺入れ人気 THEPAGE大阪 伊原薫
大阪・吹田市に新しくできた、ららぽーとEXPOCITY。その中にある千里バンパクロフトで、一風変わったiPhoneカバーを見つけた。黒地にメタリックな線で、東京や大阪の鉄道路線図が描かれている。線はカクカクしていて規則的、主要駅には小さな部品。この感じ、どこかで見たことが...と考えて思い出した。プリント基板だ。中学校の技術の授業で、小さな部品をハンダ付けした、あの緑色の板。電子機器などに組み込まれていて、金色の線がいっぱい這い回っているアレである。しかも、今話題のあの映画公認の新商品まで。一体どんな会社がこのiPhoneカバーを作ったのか。同じ吹田市にあるという会社を訪ねてみた。
「鉄道の路線図って、電子回路にそっくりだ!」
応対してくれたのは、社長の北山寛樹さん。「うちはもともと家業が電子基板を作る工場だったのですが、何か新しいことがやりたいと考えていました。2年前に東京・代官山の蔦屋書店さんから基板雑貨のお話を頂き、何ができるか考えていた時に東京の地下鉄の路線図が目に入り、「回路にそっくりだ!」とひらめいたんです。」 早速デザインに取りかかり、自社の機械を使って製作。2014年1月に「基板雑貨moeco」の第1弾として「東京回路線図 名刺入れ」を発売したところ、大きな反響を集めた。続いてiPhoneカバーを発売し、また「関西回路線図」も製作、こちらも大ヒットとなった。 「でも、せめて関西くらいの鉄道網でないと、回路にしたときに線がスカスカになってしまって面白くない。そこで、今度は道路をやってみようと思ったんです」ということで、碁盤目状の京都の道路をデザイン。外国人のお土産物として受けているそうだ。
本物の電子基板と同じ機械で製作
社長に、本社に隣接する工場を案内してもらった。この路線図基板、製造方法は電子部品の基板と全く同じ。まずガラスエポキシ基板にエッチングで配線を描き、そこに部品を取り付けていく。よく見ると主要駅の部分に小さな部品がついているが、実はこれ、チップ抵抗という本物の電子部品なのだ。こじんまりとした建物の中で、超大型プリンタのような機械がせわしなく動いている。 「これが、プリント基板に部品を実装する機械です。プリンタのヘッド状の部分で小さな部品を吸い上げて、基板上の所定の位置に取り付けていきます。駅の規模に合わせてチップ抵抗の大きさも何種類かあり、また東京駅と大阪駅は赤色のLEDで表現しています。」使われるチップ抵抗の数は「東京~」で300個以上もあるという。部品を取り付けた後に表面を樹脂で覆って平滑に仕上げ、名刺入れやiPhoneカバーと合体させて完成だ。 ところでこの基板雑貨、今年発売されたiPhone6/6plus用のカバーから更なる進化を遂げた。これまで東京駅と大阪駅のLEDは「飾り」だったのが、なんと実際に点灯するようになったのだ。 「せっかくLEDを取り付けているので、光らせたいという思いは前々からあったのですが、非常に大変でした。そもそも電池で光らせるのではエコじゃないし面白くない。そこで電池を使わずに光らせる方法を模索しました。昔あったじゃないですか、携帯電話にアンテナがついてたころ、着信するとアンテナの先が光るパーツが。あれは携帯電話の発している電波を利用しているのですが、これを応用しようと思いました。」 だが、最近の携帯電話は発している電波がとても少なく、LEDを光らせるだけの電圧が確保できない。そこで様々な部品で試行錯誤を重ね、ついに今の携帯電話でも光る組み合わせにたどり着いたのだ。 そして更にすごいのは、基板のチップ抵抗や配線もこれまでは単に「飾り」だったのが、LEDを光らせるために実際の回路として機能しているということ。電話が着信したり、データをやり取りするたびに、描かれた配線に電気が流れて駅が光る・・・なんともワクワクするではないか。