J・R・R・トールキンが創造した物語群の奥深さを感じられる『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』など週末観るならこの3本!
MOVIE WALKER PRESSスタッフが、いま観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、「ロード・オブ・ザ・リング」3部作の200年前の物語を描く長編アニメーション、人気キャラ“ソニック“が主人公の映画シリーズ第3弾、柚木麻子の同名小説をのん主演で実写映画化したサクセスストーリーの、心が踊る3本。 【写真を見る】誇り高き騎士の国“ローハン“の国王ヘルム(『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』) ■冒頭から一気に中つ国に還って来たんだという感覚にさせてくれる…『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』(公開中) “中つ国(ミドルアース)”と呼ばれる世界を舞台に善と悪の壮大な攻防を描いた「ロード・オブ・ザ・リング」三部作。この物語を生み出したJ・R・R・トールキンは、世界の創造からエルフ、ドワーフ、人間の誕生、最初の冥王モルゴスとエルフ族との戦いといったまるで神話のような歴史を紡いでいる。シリーズ最新作『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』は、そんなトールキンが創造した物語群の奥深さを感じられる作品だ。 物語の舞台は第二部『ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔』(02)に登場した騎士の国ローハン。同作ではヘルム峡谷に築かれた難攻不落の城塞、角笛城を舞台に合戦が繰り広げられたが、この峡谷と城に深く結びついたローハン第9代国王で“槌手王(ついしゅおう)”の異名を持つヘルムの伝説が描かれる。時は「ロード・オブ・ザ・リング」の時代から遡ること200年前、ヘルム王(声:市村正親)による治世のもと平和な日々を送っていたローハンに、西境の有力者の息子ウルフ(声:津田健次郎)が大軍を率いて侵攻。追い詰められたヘルムは王女ヘラ(声:小芝風花)らと共に角笛城への籠城を余儀なくされる…。 本作は「指輪物語7 追補編」に記された数ページほどの記述を原作としており、名前すら明らかでなかったヘルムの娘を、主人公ヘラとしてキャラクターを膨らませる形で物語を構築。アニメーションであり、女性が主人公であるという点も三部作につながるシリーズでは初めてだが、実写と見まがうほど美しい風景におなじみの建造物、幾千もの騎馬兵が入り乱れる合戦シーンが次々と映しだされ、冒頭から一気に中つ国に還って来たんだという感覚にさせてくれる。ヘラが“楯持つ乙女”というローハンで語り継がれる伝承を体現しており、実写映画に登場したエオウィン(ミランダ・オットー)を想起させるところもファンにはうれしいポイント。そして、特筆すべきは原作で大勢の敵兵を素手で屠ったという人間離れした描写をされているヘルムの活躍。ローハンのため、愛するヘラのため、その命を賭して戦う彼の勇姿だけでも一見の価値あり!(ライター・平尾嘉浩) ■東京から世界、そして宇宙へと広がるハイスピードバトル…『ソニック × シャドウ TOKYO MISSION』(公開中) 日本のゲームメーカー、セガが産み出したアクションゲーム「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」を原作とした劇場映画の第3弾。東京湾の収監施設で50年間幽閉されていたソニックにそっくりの姿をしたシャドウが何者かの手によって目覚め、脱走。軍からの要請でシャドウを捕獲するためにソニックは仲間のテイルスとナックルズと共に東京に向かう。圧倒的な力を持つシャドウに敗北したソニックたちは、かつての宿敵と手を組む。 東京から世界、そして宇宙へと広がる形で前2作以上に迫力を増したハイスピードバトルが展開。見た目がソニックにそっくりで、より素早く移動することができる今作の敵役となるシャドウは、圧倒的な強さを持つだけではなく、悲しい過去を抱えたキャラクター。家族や仲間という大切な存在について、ソニックとはまさに陰と陽のような対比で描かれ、シリーズ独自のド派手なアクションやコメディ的な要素がメインではありつつ、ちょっぴりビターなテイストにも触れる1作となっている。(ライター・石井誠) ■作家の思いを込めて暴走する展開はまさにのんの独壇場…『私にふさわしいホテル』(公開中) 「TRICK」シリーズや「20世紀少年三部のヒットメイカー、堤幸彦監督が、『さかなのこ』(22)などののんを主演に迎えて柚木麻子の同名小説を映画化。2024年2月に全面休館に入った東京、御茶ノ水の「山の上ホテル」が舞台の本作は、新人作家の加代子(のん)が大学の先輩でもある大手出版社の編集者、遠藤(田中圭)の力を借りながら、奇想天外な方法でコネとしがらみ、権威主義に塗れた文学界を駆け上がっていく姿を描いた痛快逆転サクセス・ストーリーだ。 のんがペンネームを何度も変えながら、巧みな話術と変幻自在の芝居で新人賞に輝く自分のデビュー作をコケにした大御所作家の東十条宗典を地獄に落とし入れていく加代子を爆演!暴言の中に文学界に対する不満や古い体質への批判、常に満たされない作家の思いを込めて暴走する展開はまさにのんの独壇場で、いつもは相手を追い詰める芝居が多い東十条に扮した滝藤賢一がたじたじになっているのも皮肉に満ちていて、気持ちいい。 さらに、橋本愛が売れっ子書店員役で出演。「あまちゃん」の名コンビが思いがけない形で共演しているのもファンには嬉しいところ。(映画ライター・イソガイマサト) 映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて。 構成/サンクレイオ翼