連続増配企業だからといって素直に喜べない?「年平均成長率」を計算することで見えてくる個別株の“真実”とは【株式投資のプロが解説】
年平均成長率を次年度予想の参考にする
以上の計算結果から、各社の配当年平均成長率は、A社が0%、B社が約8%、C社が約4.6%、D社が約13%、E社が約4.7%であることがわかります。A社は連続非減配企業ですが、配当成長率は0%であり、今後も増配は期待できないかもしれません。 常に増配しているわけではない連続非減配企業であるB社ですが、連続増配企業であるC社よりも配当年平均成長率が高いため、今後に期待できるかもしれません。C社は連続増配企業であり、その点がメディアの記事などでも注目されそうですが、年平均成長率でみるとそれほど増配していないといえそうです。 D社は配当年平均成長率が約13%もあり、単純に次年度も同じ割合だけ増配し、株価が1,000円のままならば、株価34円、配当利回り3.4%となり、この中ではもっとも有望な投資先かもしれません。 E社は実績年数が少ないのですが、以上のように年平均成長率を求めることで、他社と同様に比較することが可能となります。それもまた、年平均成長率を計算することのメリットです。 ただし、あまりにも年数が少なければ参考にはならないでしょう。E社は結局、経過年数4年間で約4.7%ずつ増配してきたことがわかります。他社と比べて、特に優れた実績ではないといえそうです。 年平均成長率は、増えたか減ったかという単純な数え方ではなく、値の変化の割合がわかります。また前述のE社のように、経過年数が違う企業同士の比較も可能です。 今回は配当の年平均成長率を計算してみましたが、同じ方法で、1株あたり純利益や、1株あたり純資産なども、年平均成長率は計算可能です。そしてそれを元に、次年度のPERやPBRなどがどう変化するかも予想可能です。ぜひ個別株投資の企業分析の参考になさってください。
計算することで見えてくる真実がある
年平均成長率は、以下の手順で計算することができます。 1.直近年度の値÷初年度の値→初年度から直近年度の間にどれくらいの割合で値が増えたかを求める…これをVとする 2.初年度から直近年度の間に経過した年数を求める…これをtとする 3.V^(1÷t)を求める→〔Vの1÷t乗〕年にどれくらいの割合で値が増え続ければ、tを経てVになるか求める…これをGとする 4.Gから1を引き、100を掛ける→1を引いて年間の成長分だけを求め、それを百分率に換算する…これが年平均成長率で、単位は%となる 年平均成長率は、増えたか減ったかという単純な数え方ではなく、値の変化の割合がわかります。また前述のE社のように、経過年数が違う企業同士の比較も可能です。ぜひ個別株投資の企業分析の参考になさってください。 川合 一啓 株式会社ソーシャルインベストメント 取締役CTO