「見た目で判断しちゃダメよ」…紹介された“全身黒ずくめにカウボーイハット”のカメラマンが厨房で見せた驚きの撮影術とは
見た目で判断しちゃダメよ
世界を一緒に旅しながら撮影してくれるカメラマンを探していたところ、友人のデイジー・リー(李艶蓮)が紹介してくれたのが、クォイだ。デイジーの作品を何本か撮った経験があるという。 「腕は間違いないの。見た目で判断しちゃダメよ」 初顔合わせに現れたクォイは、全身黒ずくめで、ベルトからはチェーンがぶら下がり、カウボーイハットに、白いフレームのメガネ、サンダル履きというスタイルだった。 背は低く浅黒くて髭を伸ばしているせいか、いつも先住民と間違われるという。当初、裏方であるカメラマンにしては、目立ちすぎやしないかと気になった。 撮影スタッフには、カメレオンよろしく現場になるべく溶け込んでほしいからだ。 監督としては、「水になれ」というブルース・リーの名言どおり、流れに任せてほしいのである。 その思いをクォイも察し、文字どおり私の目となり耳となって活躍してくれた。厨房ではステディカム(手持ちカメラのブレを抑える器具)を巧みに扱い、狭いスペースでもてきぱきと動き回る。 老子や荘子を源流とする玄学主義に影響を受けているのか、「全員のエネルギーや流れと波長を合わせれば、調和の取れた熱狂状態が生まれ、一切の衝突もなくなる」といった言葉も口にしていた。彼を採用して正解だったと納得した。 『カナダの片田舎で「中国式カフェ」を営んでいた“ある老人”の死…訃報を機に著者が語る中華料理店ドキュメンタリーの“原点”』へ続く
関 卓中(映像作家)/斎藤 栄一郎(翻訳家・ジャーナリスト)
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