「見た目で判断しちゃダメよ」…紹介された“全身黒ずくめにカウボーイハット”のカメラマンが厨房で見せた驚きの撮影術とは
北米中華、キューバ中華、アルゼンチン中華、そして日本の町中華の味は? 北極圏にある人口8万人にも満たないノルウェーの小さな町、アフリカ大陸の東に浮かぶ島国・マダガスカル、インド洋の小国・モーリシャス……。 世界の果てまで行っても、中国人経営の中華料理店はある。彼らはいつ、どのようにして、その地にたどりつき、なぜ、どのような思いで中華料理店を開いたのか? 一国一城の主や料理人、家族、地元の華人コミュニティの姿を丹念にあぶり出した関卓中(著)・斎藤栄一郎(訳)の 『地球上の中華料理店をめぐる冒険』。食を足がかりに、離散中国人の歴史的背景や状況、アイデンティティへの意識を浮き彫りにする話題作から、内容を抜粋して紹介する。 『地球上の中華料理店をめぐる冒険』連載第4回 【漫画】刑務官が明かす…死刑囚が執行時に「アイマスク」を着用する衝撃の理由 『世界中に広まり続ける華人にいまなお共通する「アイデンティティ」とは…中華料理を辿って見えてきた中国人の“民族性”』より続く
タイサン・ボーイ
「やあどうもチョック、ノイジーだよ。あの“ムゥービー”はいつ完成するんだい? 僕を主役にしてくれた例の映画なんだけど」 サスカチュワン州アウトルックの町を車で走っていると、聞き覚えのある声が電話越しに響く。気さくで憎めない性格のノイジー・ジムだ。 彼の英語は「ムービー」が「ムゥービー」といった具合に母音が長めになる訛りがある。母語である台山語の影響である(訳注:台山語とは、中国南部に広がる広東語方言の一つ。北米で話される広東語は台山語が多い)。 「今度いつ会えるかな。そういえばトイサン・ドイはどうしてる?」 正しくはタイサン・ボーイ(台山出身の青年)なのだが、ジムの訛りはそう聞こえる。 そのタイサン・ボーイとは、私のドキュメンタリー映画の撮影監督を務めているクォク・ジン(甄國健)のことで、いつも気にかけてくれるのだ。どちらも台山語を話す同郷のよしみでウマが合うらしい。クォクは、みんなからクォイと呼ばれている。
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