ソフトバンク・小久保新監督、巨大戦力に漂う“停滞感”から脱出へ 「支配下8枠争奪戦」で育成選手に好機到来
「魔改造」で知られるコーチの復帰
キャンプインの2月1日は「球界のお正月」と言われる。 ただ、2024年、宮崎の“元日”はあいにくの雨。ソフトバンクも、1軍中心のA組が午前、2軍中心のB組が午後からの時差スタートで、ともに室内練習場での始動となった。 【写真】宮崎での春季キャンプに臨むソフトバンクの選手たち。誰もが真剣な表情を浮かべる
ソフトバンクは、2023年から4軍制に拡大された。だから2月は、宮崎と福岡・筑後での分離キャンプになる。簡単に分類すれば、筑後は3、4軍の扱いになる。 キャンプインの時点で、ソフトバンクの支配下選手62人、育成選手57人の総勢119人態勢で、これは他球団の2倍近い陣容の巨大戦力でもある。今回、宮崎A組43人、同B組32人の計75人のうち、育成選手が20人抜擢されている。 内訳は、A組の野手20人中3人、投手23人中1人、B組の野手15人中5人、投手17人中11人が育成選手になっている。 この“背番号3ケタ”の20人が、初日からフルスロットルでキャンプに突入した。B組のブルペンを見て、驚かされた。育成組が初日から、それこそ全力で投げている。捕手を座らせての本格ピッチなのだ。 「みんな“やってきたな”という感じですね」 満足げにその印象を語ってくれたのは、今季からソフトバンクに復帰した倉野信次投手チーフコーチ兼ヘッドコーディネーターだった。昨季までメジャーで2年間のコーチ修行。同じ青山学院大の先輩である小久保裕紀新監督の就任に伴って古巣へ戻ってきた同チーフは、かつて指導した投手たちの球速が軒並み上がったことで、その手腕は「魔改造」とまで呼ばれている。その敏腕指導者でさえも、B組から“熱”を感じたというのだ。
昨季の倍以上の“好機”
その競争意識の高さは、62人という支配下選手の“少なさ”にある。 実は昨季の同時期、支配下選手は67人だった。上限70人までの「3枠」を登録期限の7月末まで育成選手が争うのだが、チームが低迷したり、主力に故障者が出たりすると、そこを補強用の枠として使うことになる。 昨季、ソフトバンクの「3枠」のうち、育成選手から支配下に切り替わったのは、投手の木村光1人だけ。残る2枠は、左腕のヘルナンデス獲得と、野手のデスパイネ復帰のために使われた。 昨年7月には球団史上ワースト2位となる12連敗を喫するなど、チーム力を上げるためのやむにやまれぬ事情とはいえ、これでは昨季開幕時には54人もいた育成選手のモチベーションが上がらないのも、無理はないところだろう。 これを、2軍監督から昇格した小久保新監督が“変革”したのだ。 野球協約の「日本プロ野球育成選手に関する規約」の第3条に「育成選手を保有できる球団は、当面、現に『支配下選手』を65名以上(7月末日現在)保有する球団とする」と定義され、さらに「育成選手を保有し6月末時点で支配下選手が65名に満たない球団は、育成選手を支配下選手に移行するか、または新たな支配下選手を採用するかについて7月末までに実行委員会にて説明しなければならない」と明記されている。 つまり、少なくとも育成選手保有の条件である「65人」まで、まずは支配下枠を埋めることが必要になる。だから最低でも「3」、うまくいけば7月末まで最大「8」の支配下枠を巡って、育成選手には支配下へ昇格するチャンスがあるのだ。 2月の宮崎キャンプでのパフォーマンスは、その昇格判定への大きなカギになるのは間違いない。育成選手にすれば、それこそ昨季の“倍以上”の好機が到来しているのだ。