【選手権】15年ぶりに戻ってきた“カナリア軍団”が初戦突破
12月28日、高校サッカー選手権の開会式が国立競技場で行われ、直後の開幕戦では15年ぶりの出場となる伝統校・帝京(東京B)と京都橘(京都)が対戦。 【フォトギャラリー】帝京vs京都橘 インターハイ、選手権を含めて9度の日本一経験を持つ伝統校復活へ。15年ぶりに戻ってきた“カナリア軍団”が立ち上がりから相手を飲み込んだ。 選手権予選決勝と同じく4-2-3-1の布陣でスタートしたチームは最終ラインからボールを動かしながら、ショートパスを主体に攻撃を構築。すると、5分にいきなり好機を生かす。FW森田晃(3年)のラストパスを受けた左サイドハーフのMF堀江真広(3年)が得意のドリブルで左サイドから中央に切れ込んでシュートを放つ。これで得た左CKを堀江が中へ入れると、左SBラビーニ未蘭(3年)が高打点のヘッドを叩き込んでリードを奪った。以降もキャプテンのMF砂押大翔(3年)を軸に組み立て、テンポの良い攻撃を展開していく。15分過ぎからは相手のペーストなり、攻め込まれるシーンが目立った。22分には主将・CB宮地陸翔(3年)が浮き球のパスを最終ラインの背後に通すと、FW伊藤湊太(3年)に左足でシュートを打たれてしまう。しかし、守護神・GK大橋藍(3年)が1対1を阻止して事なきを得た。 以降は一進一退の展開となり、攻守が目まぐるしく変わる流れとなったが、帝京は集中力を切らさずにリードを維持。1-0で前半を折り返し、ハーフタイムを迎えた。 両者ともにメンバーを入れ替えずに臨んだ後半は自陣で我慢する時間が増加。42分にはCKのサインプレーからCB上田慶輔(3年)にネットを揺らされたかと思われたが、オフサイドの判定で得点は取り消しに。49分にはゴール前で崩され、左サイドから伊藤に左足でゴールを狙われる。相手のシュートミスに助けられたが、以降も中盤で潰され、押し込まれる時間が続く。セカンドボールの回収も後手に回り、マイボールになかなかできなかった。すると、73分だ。左サイドでCKをショートコーナーでスタートされ、MF執行隼真(3年)がゴール前にボールを送られる。桐原惺琉(3年)に頭で合わせられ、同点に追い付かれた。 しかし、ここから帝京が意地を見せる。直後の75分。砂押が左足で前線にフィードを入れると、森田が落とす。これを拾った途中出場のFW宮本周征(2年)が右足で流し込んで即座に取り返した。 最終盤は相手のパワープレーを跳ね返す時間帯が続いたが、CB田所莉旺(3年)を軸に凌いでタイムアップ。15年ぶりの出場となった帝京が開幕戦を制し、17年ぶりとなる選手権での勝利を手に入れた。 「ハラハラするようなゲームでした」と振り返ったのは藤倉寛監督。かつて98年度大会で選手権準優勝をキャプテンとして経験しているOB指揮官は試合後の記者会見で、ホッとした表情を見せた。「いろんな想いを背負ってここにきている。何年ぶりかに戻ってきた選手権で国立。この1試合にフォーカスするのは難しい試合でした」という言葉からも、重圧があったことがうかがえる。それでも、選手たちは諦めずに最後まで戦い、終盤に追い付かれてもリバウンドメンタリティーを発揮して勝利を引き寄せた。苦しかった時代を乗り越えて掴んだ一勝は大きな価値がある。物語は終わりではない。新たな歴史を作るべく、“新生帝京”の戦いはまだ始まったばかりだ。 (文=松尾祐希 写真=矢島公彦)