中村倫也、異例の“雑炊本”に見たプロの仕事 今年の目標「人のメンツを立てる‘24」に込めた思い
「この本は、自由を楽しむレシピ本です。料理とは、自由なものです」。初の料理本にして、全編“雑炊”縛りで構成された、中村倫也(37)による異例の書籍『THE やんごとなき雑炊』(KADOKAWA 監修協力:タカハシユキ)の「まえがき」では、このようにつづられている。その言葉通り、紹介されている20の雑炊の調理工程、ショートエッセイを通して、料理の自由さと楽しさ、そして中村自身の“人生観”が垣間見える内容となっている…。と、ここまで書きながら「そもそも中村の“人生観”とは何なのか」という疑問が浮かび上がってきた。そこで、インタビュー・イベント取材の2回にわたって中村の考えに触れてみた。 【写真】やさしい笑みを浮かべてインタビューに応じる中村倫也 ■担当編集の“仕掛け”に本音「何をニヤニヤしているんだろう」 書籍化に感謝 同書は、中村が「雑炊」を作りながら「雑談」をし、その調理過程からイマジネーションしてショートエッセイを執筆するという、これまでにない斬新な誌面で、発表当初ファンをざわつかせた連載企画「中村倫也のやんごとなき雑炊」の書籍化。2022年4月号から約1年半にわたり、雑誌『ダ・ヴィンチ』で連載されたその企画誌面が、『THE やんごとなき雑炊』とタイトルを変えたものとなる。 出版前、対面でのインタビューを実施。書籍を読んで感じた「手際のよさ」について向けてみると、やわらかい笑みを浮かべた。「学生時代とかバイトとかでも『これをやっている間に、あれを終わらせておいて…』みたいなことを考える『効率』みたいなのが好きだったんですよ。それもあるのかもしれないですけど、料理って本当10秒長く火にかけただけで、ちょっと変わっちゃったりするものじゃないですか。例えば、葉野菜などが如実ですが。だから、あわあわしないように準備しておくみたいなのはしているかもしれないですが、そんな語れるほど大したものではないですよ」。 1冊の書籍になった“雑炊本”には、自分自身でも驚きの気持ちがあった。「俳優の雑炊の連載が1冊になるってことがもうわけわからない、すごいことなので、よくやったなって思います(笑)。1冊になっていることが、稀有なケースだと思います。料理とかじゃなくて『雑炊』ということに明言して作っているのは、世の中の人もきっと、本屋とかで目にしたら『どういうこと?』って思うんじゃないかなと感じているので、そういうものを形にできたっていうことに対して、このチームに『よくやったなー!』という思いです」。 調理中には、担当編集の村井氏が手際のいい中村に“さまざまな仕掛け”を行って、それに対するかけあいも読みどころのひとつ。インタビューにも同席していた村井氏が「困らせたいんです(笑)」と打ち明けると、中村は「“中村を困らせたい”は、俳優業界でもけっこうあるんですよ。こんなオファーしたら困るだろう、こんな役苦労するだろうみたいな。それで、苦労しているのを見たいみたいな。僕そんなに困らせたがらせる存在なんですかね?」と笑いながら、村井氏への“おかえし”とばかりに次のような秘話を公開した。 「村井さんの変なところは、仕掛けたいんだけど、料理を知らない(※村井氏は料理をしていないことを書籍内でも公言)から、それがミスなのか、困ることなのかがジャッジできないっていう(笑)。何を、この人はニヤニヤしているんだろうっていう瞬間もけっこうありました。タカハシ先生と共謀して、仕掛けをやっている時もあって『なんだ、そのタッグマッチは?』っていうこともありました(笑)」 村井氏とのかけあいからも伝わってくるが、書籍を読んでいると、多忙な中にあっても、中村が本当に楽しそうに料理に臨んでいるように感じられる。中村本人は、どう感じていたのだろう。「料理して、喋って、食べて、おいしいって言いながら、タイトルをつけて、写真撮ったら『お疲れ様でした!』ってなるのは、シンプルに楽しい仕事でした。この雑炊っていう縛りの中で、みんなが工夫しているのがわかるので、それを見つけると、ものづくりをするものとして、チームとしてすごく豊かな気持ちにもなりました。有意義な時間でしたね。趣味みたいなことじゃないですか。ある人は『ミスしないかな?』とか言って、料理している様子を眺めたり(笑)。これをちゃんとこうやって1冊にまとめて、仕事にしてるっていうのがプロを感じますし、なんかいろんな意味で後ろ向きなものが何もないのだと思います」。