中村倫也、異例の“雑炊本”に見たプロの仕事 今年の目標「人のメンツを立てる‘24」に込めた思い
■“穏やかに生きる”ことの大切さ 「気づく人」中村倫也は先を行く「100面相を持って…」
書籍の中では「気づかない人になりたい」ということを語っているが、鈍感ゆえの突破力を持つ人への憧れもあるという。「本当に目の前の一点しか見えてない人とかいるじゃないですか?それもそれで問題ですけど、すごくうらやましい気持ちはあるんです。槍のような人と言うんでしょうか、そういう方は突破力がすごくありますよね。僕は、それで言うといろんな種類の武器をそろえちゃうタイプなんで。憧れはあります」。まさに激動ともいえる日々だが、中村は「簡単にいえば、穏やかに生きています」と打ち明ける。 「感覚なんですけど、いろんな情報が入ってきたりとか得たりとかしている時、港にいる漁師の気持ちになって『きょう波高ぇな、すげぇなぁ』みたいな感じはあるんですよ。そういう時ほど穏やかにいたいなって思います。入ってくる情報で、多少なりとも影響を受けるじゃないですか。考えることが増えたりとか、不安になることもあったりとか。そういう時こそ、意図的に平坦な感覚を作れるようにしておくみたいな。多分そういうのをやっちゃうタイプなんです。今年も本当にいろんなことが起こっていますが、考える適切な角度で考えるべきことを考えて、あとはいつも通りっていうのを生きるようにしています」 インタビューから1ヶ月後、書籍の出版記念イベントが行われ、そこに足を運んだ。この日の進行は、担当編集の村井氏が務めた。観客から拍手で迎えられた中村は、村井氏を紹介しながら「(ともに)やりとりしながら作ってきたものを『初めて聞く』『初めて聞かれる』がごとく、質疑応答していきます」と呼びかけ、会場の雰囲気を温めた。今後の「やんごとなき」シリーズについては「雑炊の本が出て。さっき思いつきました。雑草!」と明かすなど、大いに盛り上がったが、終盤「ちょっといい話していいですか?」と切り出した。 「この間、河津桜を見に行ったんですよ。花見する時にこだわりがあって。桜が咲いている(一方で、足元では)たんぽぽが咲いている率が高くて、それを見つけて愛でるみたいなことをやっているんです。花見の席では桜がメインで、たんぽぽは気づかれない(存在なので)、僕はこっちに気づいてあげられる僕でいたいっていう…自己満足ですが、そういう気持ちがあります。僕がこっち(たんぽぽ側)だったから…っていうこともあると思うんです。(駆け出しの頃などに)現場であいさつされてうれしかったとか」 中村の人柄や考え方を感じるエピソードだが、ここで再びインタビュー時に時計の針を戻す。今年の目標を聞いてみると「僕、課題があるんですよ。『人のメンツを潰さない』です」と笑顔で教えてくれた。さて、その真意はどこにあるのだろうか。「人がたくさん関わっていると、通るべきセクションも多かったり、通すべき筋も折れ曲がったり、早い話ができなかったりするじゃないですか?そういう時に一番偉い人に話を通して、そこからズバッとトップダウンしちゃうんですよ。多分せっかちなんですが『その方が早いし、みんなもいいでしょう?』と思っちゃうんです。でもそうすると、間に入ってる人とか、どういう場でその話を通すかとか、伝え方にって、なんかこうメンツを潰すことが多分あったんですよね」。 「年齢的に挟まれている(世代で)もう1個自分が有能になるには、そこのかいくぐりをうまいことできたら、もっと腕磨いたって思えるんじゃないかな。そうすると、みんなもハッピーだし、悪い気しないじゃないですか?そこの100面相を持っていこうが、僕の今年の課題です(笑)。考えることはそっちなんですよ。今年の課題は『人のメンツを立てる‘24』にします(笑)」。今いるところから、もう一歩先へ…。そう思う時、人はもっと人にやさしくなれるし、人生が豊かになるのだと、中村の言葉から感じた。