悪性リンパ腫の完全寛解状態が続く…笠井信輔さんが訴える「昭和患者からの脱却」我慢は美徳でなく正直な思いを
■闘病生活で変わったことや新たな発見も
闘病生活を発信すると、最初は300人ほどだったインスタグラムのフォロワーは、一時30万人となり、多くの励ましのメッセージを受け取った。そして、笠井さん自身にも変化が現れたという。 妻・茅原ますみさん: 「やっぱり病気になる前は自分中心に働いていくことだけ、頑張ることだけが立っているという感じだったんですけど、病気になったら優しい人になった。だから良かったね、変われたことは良かったね」
入院生活で気付いたこともあった。抗がん剤の副作用で、笠井さんには味覚障害がでていたため、何を食べても同じ味がしたり、病院の食事の味が薄く、食べる気にならないこともあった。 しかし、そんな時は味の濃いカップ麺などを食べていたという。 笠井さん: 「僕が『カップ麺食べました』というと、全員が『良かったですね、食べましたか』って拍手してくれた。栄養のバランスなんていうのは健康な人がやればいいんだと、がん患者にバランスは必要ない。一番きつい時には本当に食べたいものを食べて、カップ麺食べるのは『正解です』と先生に言っていただきました」
■訴えたいことは“脱・昭和患者”…啓発活動や講演で社会に還元
笠井さんは4カ月半の闘病生活を終え、2020年4月に退院し、仕事に復帰することができた。いまはがんの啓発活動や、自らの闘病体験を伝える講演を積極的に行っている。
訴えるのは、我慢は美徳という「昭和患者」の価値観を変えること、正直に思いを伝えることが大事だという。
講演の参加者: 「非常に参考になりました。やはり昭和世代だと、どちらかというと我慢するという人たちが多いので、そうではない形でもっていくというのは考え方を変えていかないといけないなと」 別の参加者: 「自分もちょっとそういう病気になったので、ネガティブなところがたくさんあるんですけど、もっと前向きに生きていかなきゃいけないなと思いました」
笠井さんは、2025年の春に公開される予定の映画「春の香り」に出演する。「春の香り」は悪性脳腫瘍と闘いながら漫画家を目指し、18歳で亡くなった愛知県江南市の坂野春香さんの実話をもとにしている。 笠井さんは高校教師の父親の同僚役で出演し、モデルとなった春香さんの両親とも交流を深めたという。 笠井さん: 「自分がジャーナリズムの世界にいるからやっているんじゃなくて、やっぱり何か帰ってきたからには人のためになれないかなって。がんサバイバーの皆さんと話していると『生かされた命』何かしなきゃいけないって考えてる人が多くて、がん経験者で社会貢献活動している人って本当多いんですよ」
病院を退院してから、すでに4年あまり経ち、がんの症状や検査の異常が見られない「完全寛解」の状態が続いている。 妻・茅原ますみさん: 「死を前にするような体験をした以上、何かの形で社会に還元できるような取材をしたんだと思ってほしいなと。今年の誕生日ケーキの言葉は『健康1番・仕事も1番』って書いた」 笠井さん: 「仕事も一番でいいんだって思ったんだけども、普通に仕事を続けていきたい。特別なことはしなくていいから、普通に働き続けていきたいというのが自分の中での希望です」 2024年5月14日放送