「私たちは一貫して黒子です」 斎藤知事「疑惑」のきっかけとなったPR会社社長が学ぶべき「業界の常識」
周囲との関係を向上させる
矢島氏の述懐は、告発を受けている斎藤氏や折田氏にとって心強い面もあるだろう。自民党も民主党もPR会社と契約して広報戦略をしてきたではないか、それなのに摘発されたことはない、なぜ自分たちのケースだけが問題となるのか、これでは正直者がバカを見ることになるではないか、といった主張に使えるからだ。 ただし、PRの先輩から学ぶべき点は別にあるのもまた事実だろう。矢島氏は一貫して黒子の立場を強調しているのはすでに述べた通り。また、多くの経験ある企業やプランナーと称される人たちは、法律を理解したうえで違法性を疑われないように仕事を進めているのも言うまでもない。 同書には次の様な文章もある。 「PRというのは決して人を騙すための技術ではないのです。 私たちは魔法の杖を振り回してカボチャを馬車にすることは出来ません。また一般の人に催眠術をかけて『このカボチャは馬車だ』と信じ込ませることも出来ません。 その代わりに、顔中が灰で汚れている女性の顔を拭いて、本来の美貌を見出すことは出来るかもしれません。さらに彼女をお城まで連れて行って、『この人は王子の妃に向いています』とお勧めすることのお手伝いも出来るかもしれません。 つまり私たちが出来ること、やっていることはあくまでも、対象が本来持っている魅力を最大限にアピールするためのお手伝いなのです。(略) 魅力を高める。本来の魅力を知っていただく。その結果、周囲との関係が向上する。 それこそがPRが持つ力なのです」 残念ながら、今回の折田氏の自己PRはクライアントの魅力を高め、周囲との関係を向上させるのに貢献しなかったようである。
デイリー新潮編集部
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