「昔あったなぁ」装備 「燃料コック」操作したことありますか?
キャブレター車に必須の「燃料コック」
旧車はもちろん、2000年代中頃くらいまでのバイクには、大抵が「燃料コック」を装備していました。燃料コックとは、文字通り燃料タンクからガソリンを流す/流さないを決める仕切弁のことです。 【画像】現行車には見られない!? 「燃料コック」の画像をもっと見る(10枚)
ところが2000年代半ば頃から燃料コックは姿を消し、現行バイクでは装備していません。その理由は、この頃からエンジンへの燃料供給の方式がキャブレターからFI(フューエルインジェクション:電子制御式燃料噴射装置)に切り替わったためです。 物理現象によってガソリンと空気を混合ガスに変えるキャブレターには、車体の上部にある燃料タンクから重力によってガソリンが供給されます(落ちてくる)。そしてキャブレターの内部には、ガソリンの量を一定に保つ「フロートバルブ」と呼ぶ弁がありますが、このフロートバルブに微細なゴミが挟まったり、何らかの不調でキチンと閉じなくなると、エンジン停止中(駐車中など)にガソリンがどんどんエンジンの内部に流れ込んでしまいます。 こうなるとエンジンがかからなくなり、エンジン内部に溜まったガソリンを抜くためにエンジンオイルを交換しなければなりません。そんな事態を防ぐために、かつてのキャブレター車は「エンジンを止めたら燃料コックをOFFにする」が必須の操作でした。 しかしFIの場合は、燃料ポンプやガソリンを噴射するインジェクターを電気で駆動するため、メインキーをOFFにすれば燃料タンクからガソリンがエンジンに流れ落ちることがありません。そのため、FI車では燃料コックが不要になったのです。
燃料コックも進化した!
初期の燃料コックは「ON」と「OFF」、および「RES(リザーブ)」を切り替えるタイプが一般的でしたが、1970年代の後半頃に「負圧式燃料コック」が登場しました。
そもそもキャブレター車が燃料コックを装備するのは、エンジン停止中にガソリンが流れないようにするためだったハズ。それなのに負圧式コックは「OFF」が無くなって大丈夫なのでしょうか? じつは負圧式燃料コックは、エンジンがかかっている時に空気とガソリンが混ざった混合ガスを吸い込むときに発生する「負圧」によって、燃料コックを開けてガソリンが流れる構造になっています。 反対にエンジンが止まって負圧が発生しない状態だと、燃料コックが閉じてガソリンが流れなくなります。燃料コックのレバーが「ON」または「RES」の位置のままでも、エンジンが止まれば自動的にOFFになる便利機構で、ライダーが燃料コックの操作を忘れても大丈夫になりました。 そして切り替えには新たに「PRI」(=PRIMARYの略)が登場します。燃料コックを「PRI」の位置にすると、エンジンがかかっていてもいなくてもガソリンが流れます。それでは「PRI」をどんなシーンで使うかというと「ガス欠した後」です。 負圧式燃料コックの場合、完全にガス欠した状態でエンジンが止まってしまうと、ガソリンを給油して燃料コックを「ON」の位置にしても、キャブレターの中が空になっているので、エンジンがかからない場合があります。すると負圧が発生しないためガソリンが流れない→当然エンジンがかからない、ということになります。 そんな時に、「PRI」にすればガソリンがキャブレターに流れてエンジンをかけられます。他にも、燃料タンクを外したり、キャブレターからガソリンを抜いて整備した後なども、「PRI」を使ってエンジンをかけます。 ただし、いったんエンジンがかかったら、「PRI」から「ON」に切り替えるのを忘れないことが重要です。