日銀が追加利上げと国債買い入れ減額計画を同時決定:円安けん制を意識した決定に
次回追加利上げは今年12月で来年4月の0.75%が政策金利の当面の到達点か
実際の物価上昇率のトレンドは、2%の物価目標達成に向けて着実に高まっているという状況ではなく、輸入物価上昇ペース鈍化の影響から、食料・エネルギーを除く基調的な物価は既に前年比で2%を下回り、さらに低下方向に向かうとみられる。2%の物価目標達成は依然見えていない(コラム「東京都区部7月CPIで基調的な物価上昇率は低下を続ける:日銀の2%物価目標達成は見えない」、2024年7月26日)、「日銀が追加利上げ実施か:利上げは続くが2%物価目標達成は難しい」、2024年7月31日)。 ただし、2%の物価目標達成は難しいとしても、現在の政策金利の水準はなお低いことから、日本銀行は今後も追加利上げを粛々と続けていく可能性は高いだろう。市場は年内2回の追加利上げを織り込んでいくのではないか。 筆者は次の利上げは今年12月に実施され、さらに来年4月にも実施されて政策金利は0.75%まで上昇し、その水準が当面の到達点(ターミナルレート)と見る。上振れるとしても1.0%までではないか。 仮に2%の物価目標が達成されるのであれば、政策金利の到達点は2%前後になるが、実際のインフレ率のトレンドはせいぜい1%程度と考えるためだ。 現時点では、2%の物価目標が日本銀行の追加利上げの制約になることはないが、将来的にはそれは起こり得るだろう。物価上昇率が2%に達しないとの見方が強まれば、日本銀行に対して一転して金融緩和の圧力が外部からかかる可能性も生じ得よう。日本銀行の金融政策が物価目標によって過度に縛られることがないよう、日本銀行は、早期に2%の物価目標を柔軟化することが求められる。
国債買い入れ減額は柔軟な枠組みで予想に沿ったもの
他方、国債買い入れ減額計画については、月間の長期国債の買い入れ予定額を原則として毎四半期4,000億円程度ずつ減額し、2026年1~3月に3兆円程度にするとした。さらに来年6月には中間評価を行い、必要となれば計画を修正する。同時に2026年4月以降の減額方針も検討し、その結果を示す。 一方、長期金利が急激に上昇する場合には、毎月の長期国債買い入れ予定額に関わらず、買い入れ増額、指値オペ、共通担保資金供給オペなどを実施して、長期金利の上昇を抑える。また、必要に応じて、決定会合で減額計画を見直すこともあり得る、とした。 2026年1~3月に3兆円程度となるまでの段階的な国債買い入れ減額計画は、概ね事前予想通りと言えるだろう。さらに、計画は想定以上に柔軟な枠組みとなっており、国債買い入れ減額についての市場の不安を和らげるものだ。国債市場には概ね中立的な内容となったのではないか。 ゾーンごとの国債買い入れ額の方針は示されなかったが、これは今後随時検討していくことになるだろう。日本銀行としては、償還見合いで迅速な保有国債の削減ができるように、つまり円滑な正常化ができるように、長期ゾーンの減額幅を大きめにし、保有国債の平均残存期間の短期化を図りたいだろう。政府が発行する国債の短期化が行われれば、それは日本銀行の保有国債の平均残存期間の短期化を助けることになる。 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
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