市川團子『天守物語』で玉三郎と本格共演 「食らいついて、たくさん学びたい」
12月歌舞伎座「十二月大歌舞伎」(12月3日初日~26日千穐楽)の第三部にて、文豪・泉鏡花の傑作戯曲『天守物語』を上演。白鷺城(現在の姫路城)の天守閣にまつわる伝説をもとに、天守閣の最上階に棲む美しく気高い天守夫人・富姫と、若き鷹匠・姫川図書之助の夢幻的な恋が描かれる。演出の玉三郎が本興行で10年ぶりに富姫を勤め、市川團子が初役で姫川図書之助を勤めることになり、大きな話題を集めている。 【全ての写真】歌舞伎座「十二月大歌舞伎」『天守物語』取材会より 今年はスーパー歌舞伎『ヤマトタケル』に主演し、ロングラン公演を完遂。存在感を発揮し、飛躍を遂げた團子が取材に応じ、『天守物語』に向けた意気込みを語った。図書之助は、昭和40(1965)年1月日生劇場にて、團子の祖父にあたる二世市川猿翁(三代目猿之助)も勤めた所縁ある役だ。「図書之助を勤めさせていただくことがわかったときは、『まさか僕が』という思いがあり、祖父と同じ役ができることへのうれしさもありました」と喜びを語る。 9月に京都・京都芸術劇場の春秋座に出演した際、担当者が京都芸術大学に残された資料から、猿翁の『天守物語』の出演時の写真を発掘してくれたと笑顔で振り返った。「残念ながら、映像は残っていないそうですが、祖父がどのように図書之助を勤めたんだろうと考えながら、台本と向き合って頑張りたい」と決意を新たにする。 また、「祖父は熱量を絶やしたことのない人。カリスマで、どんどん前に進んでいく感じが格好いいですし、パワフルなところが好きです。役の解釈とか、生前に聞いておきたかったこともたくさんありますし、指導を受けたいなと思うこともあります」と昨年9月に亡くなった祖父に思いを馳せた。 玉三郎とは、『女暫』(2013年)、『助六由縁江戸桜』(2022年)に続いて、同じ舞台に立つが、相手役としての共演は初めて。「自分の中の勝手な印象かもしれませんが」と前置きし、「心で何を思うかという、すごく感情を大事にされていらっしゃる方だと思います。作家に対するリスペクトがあり、セリフを非常に大事にされている」と敬意を示す。 最近では、玉三郎が出演した『吉野川』『源氏物語』を観劇したといい、「台詞や動きの一つひとつから、感情のイメージを強く受けました。その日その日で、溢れてくる感情を大切になさっているのかなと思います」と、自身の視点で解釈。「ガッツリお芝居をさせていただくのは初めて。これまで澤瀉屋のお芝居に出させていただくのが中心でしたが、初めて違う家の方とお芝居をさせていただくことで、食らいついていきつつ、たくさん学ばせていただきたい」と闘志を燃やしていた。