ポルシェ・パナメーラ・ターボへ試乗 平衡感覚が狂う勢い 「毎秒13回」可変のエアサスに感動
1秒間に13回も制御されるエアスプリング
1枚目の写真に違和感をお感じだとしたら、読者の目はかなり鋭い。車重2360kgのビッグサルーンが、サーキットで勢いよく旋回しているにも関わらず、殆どボディロールしていないことにお気づきだろうか。 【写真】平衡感覚が狂う勢い ポルシェ・パナメーラ・ターボ 競合する高性能サルーンと比較 (115枚) もちろん、CG加工ではない。AIの生成画像でもない。ポルシェ・アクティブ・ライド(PAR)という、最新のサスペンションが叶える技だ。 PARは、アンチロールバーを不要とした。電気モーターで稼働する油圧ポンプが備わり、エアスプリングに内蔵されたアクチュエーターを介し、空気圧を調整。前後左右、個別に硬さと車高を調整することを可能にしている。 今回の試乗会場には、その技術のデモのため、1台のパナメーラが置かれていた。アメリカ車のローライダーさながら、踊るように跳ねてみせた。このパワフルさで、ボディロールを完全に打ち消すという。加減速時の上下動、ピッチも同様に抑え込む。 むしろコーナリングでは、内側へボディを傾けることすら可能。舗装が剥がれたような荒れた路面では、瞬間的に任意のタイヤを上下動させ、しなやかに路面へ追従させることもできる。エアスプリングは、1秒間に13回も制御されるとのこと。 このPARは、ステアリングとアクセル、ブレーキ、加速度に加えて、サスペンションに実装されたセンサーのデータをもとに動作する。カメラ映像を解析し、事前に制御するシステムも存在するが、精度の低さを理由にポルシェは採用していない。
ツインスクロールからシングルスクロールへ
その実力を披露するべく、ポルシェの技術者は、複雑に波打った路面でパナメーラを試走。低くない速度で走るさなか、タイヤは激しく上下へ動きつつ、ボディは見事にフラットに保たれていた。感動的なほど。 筆者も、加減速やスラロームなど、激しくパナメーラを操ってみたが、不思議なほどにボディは水平で平然。PARが非装備のパナメーラで同じことをすると、確かに揺れは大きい。それでも、ライバルより姿勢制御は優秀といえたが。 サスペンションの有能ぶりを実感した後、スペイン南西部のモンテブランコ・サーキットへ移動。システム総合680psの実力を確かめる番だ。 現在のパナメーラのフラッグシップとなる「ターボ」には、長いサブネームが付いていないが、プラグイン・ハイブリッド。電圧400Vのシステムが実装され、そのぶん車重は軽くない。それでも、すこぶる速い。 スポーツプラス・モードは、駆動用バッテリーが充電されている状態が前提。V8エンジンは迫力のサウンドを奏でるが、排気ガス規制に対応したマフラーのため、排気音は少しこもった響きだ。 ターボチャージャーは、アップデート前はツインスクロールが2基組まれていたが、新たに小型のシングルスクロールへ置換された。触媒が有害物質を効率的に除去できる温度へ、短時間に上昇させることが狙われている。 そのぶん、ターボラグは僅かに長くなる。それは、ハイブリッドのアシストが解消するという。