皇籍離脱を自ら申し出た旧皇族の情願書を発掘! 社会学的皇室ウォッチング!/117 成城大教授・森暢平
◇新憲法下の継承権は単なる形式に過ぎず 皇位継承の有識者会議報告書(2021年)には、「旧11宮家の皇族男子は、日本国憲法及び現行の皇室典範の下で、皇位継承資格を有していた」とある。少なくとも形式的にそうであったにすぎず、皇籍復帰の根拠とすることには無理がある。 なお、47年2月18日、「近く臣籍降下する宮家に対する降下後の宮中における取扱方針」が決定された。新年、天長節(天皇誕生日)などの拝賀、春季皇霊祭などの祭典参列はこれまでどおりと決まった。これについて歴史学者、勝岡寛次は「殆(ほとん)ど皇族と変らないのではないか」(「菊栄親睦会の基礎的研究」『日本国史学』17号〈2021年〉)と評価する。しかし、旧皇族の男系男子から皇位継承権を取り上げ、財政的な支えをなくすという大改革の裏面で、せめて拝賀や参列を従前どおりにするのは激変緩和措置にすぎない。認められたのも、当主、尊属、嗣子とその配偶者に限られた(51人中28人)。 そもそも、「皇室典範増補」(1907年)第6条に「皇族の臣籍に入りたる者は皇族に復することを得す」とあったことを軽視するのはおかしい。皇室と国民の間に明確な区別をつけ、皇室の尊厳を守る措置だった。皇室の聖性を守りたい男系派が、区別を曖昧にしている。旧皇族はGHQによって無理やり離脱させられたと言いたいのだろうが、情願書を見てもその主張には無理がある。 〈サンデー毎日6月30日号(6月18日発売)より。以下次号) 情願書は、宮内庁宮内公文書館所蔵の「皇族御身分録昭和22年~25年」(識別番号30754)のなかに収められている。 ■もり・ようへい 成城大文芸学部教授。1964年生まれ。博士。毎日新聞で皇室などを担当。CNN日本語サイト編集長、琉球新報米国駐在を経て、2017年から現職。著書に『天皇家の財布』(新潮新書)、『天皇家の恋愛』(中公新書)など 6月18日発売の「サンデー毎日 6月30日号」には、ほかにも「田原総一朗が直撃! 蓮舫『都知事選、私はこう戦う』「バレーボール男子日本代表 グラビア&ルポ9P大特集」「『親の介護のリアル』50代記者×コラムニストが本音対談」」などの記事も掲載しています。