jo0jiに初インタビュー。彼の音楽に敷き詰められている気取らない優しさの正体
認めさせてやろうみたいなのはあんまない
ーー自分の思いを誰かに伝えたい、自分のことをわかってほしい、という感覚は昔からあまりないほうですか? 「そうですね。ずっと話を聞く側だったんです。友達といる時もそうだし、姉ちゃんがいて、いとこも7人ぐらいいるんですけど、みんな俺よりも年上で。俺が一番ちっちゃいんで、子供の話って面白くないじゃないですか。『おまえの話長い』とか『おまえの話つまらん』とかめっちゃ言われてたんで、それもあって話すより聞こう、みたいな感じになっていって」 ーー誰も聞いてくれなくてつまらない、ともならず? 「途中から人の話を聞くほうが心地よくなっていきましたね。それも、〈この人こう言ってるけど、たぶんこう思ってるんだろうな〉みたいな、ちょっと穿った聞き方をしてて(笑)。そういう妄想をして遊んでましたね。今書いてる歌詞もたぶん同じで。誰かが言ってたことを、こう思ってるんだろうなって勝手に予測して膨らませて書くこともあります」 ーーたしかに、人や物事を俯瞰して書いている印象で。自分のことをわかってほしい! この思いを伝えたい!みたいなガツガツした曲はあまりないですよね。 「うん。認めさせてやろうみたいなのはあんまないかもしれないですね。周りにいる人たちが『いい』って言うのを作れれば、今のところ満足ですし。自分ひとりでできるとは思ってないからかもしれません」 ーーどういうことですか? 「小学校1クラスでしたし、中学校も1学年60人ぐらいしかいなくて。60人ならなんかで一番は取れそうだなって思うんですけど、俺、一番取ったことないんですよ。そういうのもあって、あんまり自分に自信がないんだと思うんです。自分の意見が正しいみたいなことを言う自信がないというか」 ーーそういう人が曲を作りはじめると、これまで言えなかったことを曲に落とし込んだり、音楽だけは自分の素直な気持ちを吐き出せる場所、ってなることも多いですが。 「そうですね。でも俺は人の話でけっこう救われることが多かったんで。自分のことってあんまわからないんですよ。なんかモヤっとしてても、あんま考えないようにしてたところもあると思うし。でも俺の友達はなんでもよく喋るんで(笑)。そこで、同じこと思ってた!とか、よくぞ言ってくれた!みたいなことがよくあって。それを曲にしてる感じかもしれないです」 ーー最新曲の「眼差し」は、どんなイメージから作っていったんですか? 「これは〈ひと夏の~〉みたいな映画が世の中にいっぱいあるじゃないですか。それを夏前ぐらいに片っ端から観てて。ひと夏の恋って、だいたい成就するまでがすごく長いんですよ。で、成就してからは短くて。その感じを曲にできないかなって思ったんです。それこそ今までは友達との出来事から曲作ってばかりで、特定のシチュエーションに合わせて作ることはあんまやってなかったんですけど、自分の実生活とそういう映画のシチュエーションが重なる部分を考えて作ってみました」 ーーどんなところが重なりました? 「今、音楽に関わることは全部クリエイターの人と一緒にやっていて。自分が高校の時に見てた人たちが声かけてくれて一緒にやっているんですけど、そこに対してめちゃめちゃ嬉しい気持ちと、俺なんかで大丈夫かな?みたいな、引け目をどっか感じてて。今はほんとに仲よくなれたんですけど、最初のほうはすごい距離があったんです。それが映画の恋が成就するまでの時間と似てんじゃない?って思って」 ーー男女の心の距離と、自分とクリエイターとの心の距離が重なったと。 「僕、目を合わせてよう喋れないんですけど、クリエイターの人たちともずっと目線を合わせれなくて(笑)。だけどちゃんと伝えたいことがあったらしっかり目を見据えて喋れて、それで距離がだんだん縮まっていった。それをそのまま書くのはちょっと恥ずかしかったんで、ラヴソングにしちゃいました(笑)。バレないように」 ーーふふふ。自分の中で生まれた感情や経験を曲にしたっていう点では、これまでの曲とは違う成り立ちなんですね。 「最近はけっこう自分の気持ちを曲にできるようになってきましたね。今まではだらだら過ごしてたっていうのもあって、自分の心が動くことが少なかったんですよ。だから人の心の動きを俯瞰して曲にしてた。でも関わってくれる人が増えて、いいものを作らないとそっぽ向かれちゃうよ、みたいな状況に置かれた時に、気張れば気張るほど空回りする瞬間も増えて。自分の中でもいろんなドラマが起きてるんだろうなって。最近はそのざわざわをちゃんと覚えて曲にするようにしてますね」 ーー自分の感覚を曲にすることに恥ずかしさはないですか? 「ないですね。逆にもっと出てこいって思うんですよ。人は人の恥の部分に共感できると思ってて。例えば〈駄叉〉って曲は幼馴染が失恋した時の曲なんですけど、全部言うんですよ、その友達は。恥ずかしいことも情けないことも。それにすごく勇気をもらうというか」 ーーそこまでさらけ出してくれることに。 「うん。俺の友達はみんな恥ずかしいところをおっぴろげに言ってくるから、そこが好きだし、俺もそうありたいなと思う。どんどん自分をさらしていくっていうスタイルになっていきたいですね」 ーー音楽で誰かを勇気づけたい、励ましたいみたいな気持ちもありますか? 「そうですね。小さい頃から聴いてたミュージシャンはみんなそういうメッセージがこもってたと思うんで。何かしら音楽には励ましてもらってたというか。踏ん張りが効かなそうな時に、背中を押してくれたのが音楽だったんで、自分の曲もそうありたい。ただ俺自身は偏屈であまのじゃくだからストレートに『頑張れ』って言われると、〈うるせえ〉ってなるんで(笑)。〈まあまあまあ〉って言いながら〈でも頑張れよ〉っていうスタンスでいたいですね」 ーーああ、だから「大丈夫」「無理だけはするな」みたいな歌詞になるんですね。しかし、こうやって話をしているかぎりはそこまで偏屈な方には思えなかったんですが。 「いやぁ、ほんと偏屈でしたよ。昔は特にクソガキだったと思います(笑)」 ーークソガキエピソードをひとつあげるとしたら? 「すぐキレれてましたね(笑)。なんでもすぐ食ってかかるというか。『起立!』『は?』みたいな。無作為にその時の感情で言っちゃう。しかも『無駄じゃないですか、この時間』みたいな屁理屈をこねたりもして」 ーー面倒くさい(笑)。 「それも逆張りだったと思うし、普通に目立ちたがり屋だったのもあると思うんですけど。そういう訳わかんないことを言ってても、周りのやつらが面白がってくれたんで、そこに救われました。俺なら絶対こんなやつ友達にならないんで(笑)」 ーー音楽を作るきっかけをくれたのも友達ですし、友達の存在はjo0jiさんの中でとても大きいんですね。 「ほんとに。そういうやつらに感謝だし、好きだなっていう気持ちがあるし、俺もそういうふうになりたいなと思う。だから俺みたいに教室の隅っこにいるやつに、〈どしたん、話聞こか?〉みたいな存在に俺の曲がなれたらいいなって思いますね」
竹内陽香(音楽と人)