【DeNA】福本打撃投手は骨折しても頂点へ投げ続けた!スポニチ独自、日本一秘話連載スタート
DeNAが98年以来26年ぶりの「日本一」を達成。3位から頂点に昇りつめた「成り上がり」のシーズンを、スポーツニッポン担当記者は1年を通し見届けた。その舞台裏にはシーズン中に明かせなかった多くの秘話がある。ここでは、独自取材の秘話を5回連載で紹介する。初回は「骨折」しても「投げたい」を続けた福本誠打撃投手(48)の秘話。(構成、スポニチDeNA担当・大木 穂高) 話を聞いたとき耳を疑った。10月29日、日本シリーズ第3戦(みずほペイペイドーム)試合前。打撃練習で登板するためストレッチしていた福本打撃投手が、記者を見つけボソッと言った。「骨、折れているんですよ」。左肋軟骨骨折。完治したのではない。そのとき骨折中だった。 聞き入った。クライマックスシリーズ前。福本氏は不慮の形で同箇所を痛めた。「折れたな」と思ったという。数日、「くしゃみ」も「せき払い」も激痛が走った。だが事実が広がれば、チーム同行にストップがかかる。そう感じ、選手に明かすこともなかった。 チームドクターの診察は受けた。診察結果は出たが、踏みとどまるつもりはなかった。「投げたい。みんなと一緒に日本一になりたい」。その思いだけだ。 投球を担当する選手は筒香、桑原、オースティンら主軸。骨折を知れば主軸勢は「無理しないでください」と気を使うに違いない。だから黙って痛みと闘い、投げ続けた。 記者が知ったときは「それでも少し楽になってきたんです」という状態だった。目で語り合う。「この話はシーズンが終わるまで明かしてはいけない」。それだけ、同氏も26年ぶりの日本一に右腕を「懸けて」いる。 もちろん、それ以降も試合は続く。記者は、試合前の同氏の投球姿を見て胸が引き裂かれる思いだった。「福本さんの気持ち、報われろ」。第6戦。日本一を達成した試合で筒香は決勝の先制ソロを放ち、桑原はシリーズMVPを獲得した。 骨折しながら投げ続けた思いは大願成就した。「いつも、自分は今日が最後になっても構わないと思って投げている。でも日本シリーズで投げるなんて、こんなに楽しいことはないですね。もうすぐ治ります。また秋季トレも始まります。当然投げます」。笑顔を見せた鉄腕。ビールかけのあと、同氏を見つけ抱きつきたい思いを記者はグッとこらえた。軽く目を合わせてうなずきあうだけだった。