ぜいたくカレーパン、まるで「肉料理」 ホテルニューオータニ総料理長 自慢の1品
■人気の銀座カレー パンに合わせて進化
「パン生地や揚げ油も、何度も試行錯誤を繰り返しました」と中島さん。薄いオレンジ色のパン生地には、カスカラという、コーヒーの実の皮と果肉部分を乾燥・粉砕したものを入れています。「カスカラにはポリフェノールが含まれ、栄養価が高いのです。酸味があり、パン生地に混ぜ込むと甘みが引き出されます」 パン粉をまとわせる際には液卵ではなく水を使い、揚げ油は米油。どちらも食後感が重くなり過ぎないための工夫です。専用のフライヤーを使い、時折竹ぐしを刺してガスを抜きながら完璧な形のまま黄金色に揚げていきます。 中島さんはパティシエ出身の総料理長で、ニューオータニのスタースイーツを広めた立役者。「1998年にレストランSATSUKIが誕生したときに、メニューの中においしいカレーがあったんです。それが今でも人気の銀座カレーです。カレーパンをつくるなら、レストランの銀座カレーを入れたらいいじゃないか、と思いついたわけです」。以来、中島さんはより上質なクオリティーを追究し、パン生地や具材の研究を進めていきました。アイデア豊富な中島さんだからこそ、カレーパンが華々しい進化を遂げられたのですね。 ホテルで吟味された黒毛和牛とレストランのカレーを、惜しみなく投入した究極のカレーパン。ブッチャーからレストラン厨房、ベーカリーが連携して完成する工程もまた、ぜいたくな一品を生み出すホテルの底力の証左、といえるでしょう。 文:THE NIKKEI MAGAZINE 編集長 松本和佳 ※この記事は「THE NIKKEI MAGAZINE」の記事を再構成して配信しています。