ネット動画の後追い蔓延 年末の風物詩、テレビの「衝撃映像」制作者の苦悩
2016年も師走になり、今年1年を振り返るニュースやバラエティ番組を見る機会が増えてくる。 いわば1年を締めくくる風物詩とも言えるのが、決定的瞬間をとらえた衝撃映像番組もその中の一つだ。 予想外のハプニングや恐怖の事件事故、驚異の自然現象、そして感動の生命の誕生など、カメラがとらえた奇跡的な映像はインパクトがあり人気だ。 だがその一方で、「これどこかで見たことない?」という印象を視聴者が持つものも少なくない。 実際、同じ映像が使い回されているケースも多々ある。 「昔は制作費も潤沢(じゅんたく)で、権利関係などが緩いこともあって、海外から映像を買って流していました。今は、何秒で何万円、何十万円という費用を払うだけの予算もなく、また肖像権もうるさいので、海外から取り寄せるにしても、なるべく安く、権利を取りやすい映像ということになってしまう。その結果、必然的に取り扱う映像が被ってしまうこともあるんです」(番組制作会社ディレクター)
増えるネット動画の後追い映像
さらに、最近ではYoutubeをはじめとする動画サイトで再生回数が多い映像をテレビで取り上げていることも、同じ映像が使われる要因となっている。 「再生回数は目に見える人気のバロメーターです。100万回を超える再生回数を誇る動画は、『視聴率に繋がるのでは?』と制作サイドは欲もかくし、一般人の投稿ということで費用もほとんどかかりません。すでに話題になっているという安心感と、使いやすさから各番組に重宝されています」(放送作家) テレビ局やその下請けである番組制作会社は、衝撃映像を撮影するのではなく、今や映像チェックのほうがメインの仕事になっているという。 「ある動物を長期間にわたってカメラが追うなんて企画は、予算も人手もあるNHKくらいしかできません。撮影する人はそれに専念できるわけですから、その中で決定的瞬間も撮れるでしょう。予算が限られる民放ではそういうわけにはいかない。だから、どこにも放送されていない衝撃映像を動画サイトから探すのが、ADや作家見習いの仕事になっています。あまりインパクトがないものでも、数秒ずつ連続して見せていくと、それなりに面白く見せることもできますし」(前出の放送作家) 編集テクニックで素材を面白くしているということだが、見方を変えれば“手抜き”とも言えなくはない。