一度は位置奪われるも…勝負どころの“超絶技巧”で連覇 帝王・山田裕仁氏が古性優作に凄味感じた瞬間/弥彦G1決勝回顧
古性優作が連覇、配当は12万超の波乱
2着は小原選手で、外で接戦となった3着争いは河端選手が競り勝ちました。郡司選手は5着、脇本選手は7着という結果で、古性選手が優勝したにもかかわらず、3連単は12万1,980円という超高配当に。2着の小原選手は、郡司選手との連係を外してしまい古性選手の後ろにつけたことが、結果的に功を奏しましたね。河端選手の3着も、あそこで仕掛けてくれた佐々木選手の貢献大でしょう。 まずは新山選手が寺崎選手を叩き、その後に間髪を入れず郡司選手が襲いかかるという、近畿勢にとってはかなり厳しい展開。レース後に脇本選手が「やはり連チャンで来られるときつい」とコメントしていたように、近畿勢が楽に逃げる展開など絶対に許さない…という、北日本勢と南関東勢の強い意志を感じたレースでした。出走した全員が優勝を目指してすべてを出し切った、まさに“激戦”だったと思います。
正解を出し続ける古性の“凄味”
そんな厳しく動きのある展開のなか、終始冷静な立ち回りで勝利をもぎ取った古性選手には、本当に頭が下がる思いですよ。寺崎選手のダッシュで口があいたところを渡部選手に入られたシーンはヒヤッとしましたが、ポジションを奪い返してからはまさに臨機応変の動きで、正解を出し続けている。なかでも特筆すべきは、最終3コーナーで郡司選手の内を突いたシーン。ぜひここを、何度もコマ送りで再生してみてください。 この直前、古性選手の前輪は「郡司選手の後輪の外」に差し込まれているはず。この態勢のまま進路を内にきったら、郡司選手を巻き込みつつ古性選手も落車してしまいます。それを避けるために、古性選手は自転車を手前方向に一瞬だけ引き込んで、前輪の位置を外から内に入れ替えているんです。超一流のマーク選手が使うテクニックで、これができるのは輪界で10人もいないのではないでしょうか。 これがあったから、古性選手は郡司選手の内にスッと入ることができた。普通あのシーンでは、郡司選手と佐々木選手の間を割ることしか考えないですよ。この決勝戦で、古性選手の“凄味”をいちばん感じたのが、この瞬間でしたね。あとは、宇都宮・共同通信社杯競輪(GII)のときよりもいいデキにあったというのも、優勝できた理由のひとつ。連覇を狙って、最初から獲りにきていたような印象があります。 優勝インタビューで「ダブルグランドスラム」という言葉も飛び出したように、ストイックなまでに上を目指すその姿勢は、すべての競輪選手のお手本となるもの。この優勝で、2022年の脇本選手に続く「年間獲得賞金3億円超え」が見えてきましたね。また、KEIRINグランプリ出場権をめぐる戦いも、本当に面白くなりました。ここから小倉・競輪祭(GI)までは、記念戦線にも目が離せません。