原料の争奪戦も 空の脱炭素「国産SAF」製造へ【WBSクロス】
脱炭素の切り札として注目されている持続可能な航空燃料「SAF」。日本も国内での製造に乗り出しましたが、その一方で想定していなかった事態も起きています。 飛行機の給油口に繋がれるパイプ。注がれていたのが持続可能な航空燃料、通称「SAF」です。サトウキビや使用済みの油を加工して作る環境に優しい燃料で、ジェット燃料に比べ二酸化炭素の排出量を8割ほど減らせます。 政府は脱炭素社会の実現のため、2030年までに国内の航空会社が使用する燃料の1割をSAFにする目標を掲げています。
そのため、SAF需要は今後増加することが見込まれていますが、現在はそのほとんどを輸入に頼っています。そこで動き始めたのがSAFの国産化です。 大阪・堺市では、コスモ石油がプラント製造大手の日揮などと国内初のSAF製造プラントを建設しています。完成は2025年。コスモ石油では2030年には年間30万キロリットルを生産予定です。 ただ、SAFの国産化にはプラントだけではなく、原料の確保が欠かせません。意外なところにその現場がありました。何と焼肉店です。
焼肉店「焼肉きんぐ」で意外にも注文が多いというのは、熱々の揚げ物です。大量の油で唐揚げやポテトフライなどを調理します。この店で毎週行われているのが「古くなった油を専用の缶に入れて、廃油の回収業者が取りに来て持っていく」。 回収業者は使用済みの油を店から購入。これをプラントで加工し、国産のSAFを製造する計画です。プラントが完成するまでは一時的に専用のタンクで保管します。 「SAFが注目されてきているので、依頼をもらう取引先が増加傾向にある」(「吉川油脂」埼玉営業所の齋藤裕之所長) 店側も「今まで飼料、肥料、工業用にリサイクルしていたが、SAFという新しい原料になる。飛行機が飛んでいるのを見て、自分が調理した油で飛んでいるかもしれないと思ってくれたらうれしい」(焼肉きんぐを運営する物語コーポレーションの大多修平さん)と話します。 全国でホテルを展開する「星野リゾート」でも4月からホテルで使った油をSAFに再資源化する取り組みを本格化させ、今後全国に展開する予定です。