観光列車(8月20日)
観光列車が花盛りだ。大きな車窓越しに風光明媚[ふうこうめいび]な沿線の四季を楽しめる。美術工芸の贅[ぜい]を尽くした内装、向かう先々の味覚に出会えるサービス…。全国各地の鉄道会社が知恵を絞る▼日本民営鉄道協会によると、1950~60年代、海水浴場や観光地に人を運ぶ特別列車が人気を集めた。車社会が進み、移動手段としての観光列車は下火に。現在は乗車体験そのものが目当てだ。南東北3県を巡り、食と文化を堪能するJR東日本の「SATONO」、会津鉄道の「お座トロ展望列車」などが県内を走る。誘客に向けた事業者間の競争は激しさを増し、乗り鉄をわくわくさせる▼国内屈指の秘境路線・JR只見線でも、オリジナル観光列車の導入に向けて検討が始まった。会津鉄道と車両を併用する。只見線こども会議は、車両の内外装のデザイン、サービスなどの試案を今月末まで、小中高生から募っている。アイデアは実現するかもしれない。みずみずしい発想が楽しみだ▼漆器や会津木綿、地酒、霧に包まれる幻想的な集落の景観…。只見線沿線の魅力は尽きない。新たな観光列車が古里のぜいたくを運んでくる。綿々と受け継がれてきた奥会津の粋が、乗客の心を酔わす。<2024・8・20>