豪華寝台列車に座席指定特急、廃止区間の復活も 2017年の鉄道を振り返る
自然災害で南海など多くの被害 JR九州では復旧足踏みも
今年も多くの自然災害が日本列島を襲い、各地の鉄道が大きな被害を受けました。関西で大きく報道されたのは、10月に発生した南海電鉄の被害。台風21号の影響によるもので、南海本線では橋梁が陥没しました。 同所では被害がなかった上り線の橋梁を使い、単線で列車を交互に運転する方法で10日後に運転を再開。1ヶ月後には復旧工事が完了し、通常のダイヤに戻りました。 一方、同じ台風21号では高野線も被害を受け、こちらは現在も復旧の見通しが立っていません。JR関西本線も一部区間で不通となり、バス代行輸送が続いていますが、こちらは来年1月初めに運行を再開する予定です。 このほか、京都丹後鉄道やJR九州などでも、豪雨災害による被害が発生しました。JR九州の一部区間では、復旧に際し莫大な費用がかかることから、その先行きが不透明な状況となっています。
JR北海道の経営危機、対応は遅々として進まず
2016年11月に、JR北海道が「自社単独での維持が困難な路線」を発表してから1年が経過。同社が運行する路線の半分を占めており、同社の経営危機の深刻さがうかがえます。同社は公共交通ネットワークを維持するために、自治体との協議を望む一方、多くの自治体は「JR北海道が自助努力で維持すべき」というスタンスで、議論は平行線のままです。 鉄道の利用者数が減っている背景には、沿線人口の減少や道路網の整備など、鉄道会社だけではどうにもならない原因があることも確かです。廃線ありき、存続ありきではなく、その地域にどんな公共交通が必要なのかを、地域に関わるすべての関係者が真剣に考える必要があります。
あわや大事故、新幹線「のぞみ」の台車が破損
東海道・山陽新幹線を走っていた「のぞみ」で異臭や異音が発生。途中駅で点検したところ、台車に亀裂が見つかりました。亀裂の大きさは部材幅の4分の3以上におよび、発見が遅ければ脱線の危険性も。幸い事故には至らなかったものの、52年という新幹線の歴史で初めてとなる「重大インシデント」に認定されました。 なぜこのような事態になったのかは、現在も調査が続けられていますが、 1,300人もの乗客を時速300kmで運ぶ新幹線は、一歩間違えば大惨事を引き起こしかねません。鉄道関係者が守るべき「運転の安全の確保に関する省令」で、「安全の確保は、輸送の生命である」と定められているように、安全が全てに最優先するということを、改めて確認してほしいものです。 ここ数か月は鉄道の根幹に関わる話題が目立った2017年。多くの人たちの命と生活を支えている鉄道が、より安全で快適なものとなることを、そして来年も鉄道が楽しい旅と未来を運んでくれることを願いたいと思います。 (鉄道ライター/伊原薫) ■伊原薫(いはら・かおる)大阪府生まれ。京都大学大学院・都市交通政策技術者。(一社)交通環境整備ネットワーク会員。グッズ制作やイベント企画から物書き・監修などに取り組む。都市交通政策や鉄道と地域の活性化にも携わっている。好きなものは103系、キハ30、和田岬線、北千住駅の発車メロディ。