「まさか自分が」学生時代に下半身まひ…リハビリ支える“車いすの医師” 経験生かし患者に寄り添う「自分らしく生きて」
「自分らしく生きる」
不安を抱えながらも加藤さんは筋トレなどリハビリに専念する。 加藤雄大医師: 「自分でできることが一つずつ増えていくのは、『自分らしく生きる』ことを取り返していくことにつながっていた」 車いす生活のトレーニングは1カ月半続いた。そのあと、日常生活への復帰に向けて、「県立総合リハビリテーションセンター」へ。 加藤さんの主治医を務めた清野良文所長。当時の加藤さんの様子をよく覚えている。 当時の主治医・清野良文所長: 「加藤先生、その時は加藤君だったんですけど、通常は受傷した自分をまだ受け入れられない。かなり落ち込む人もいるけど、落ち込んで暗くなって、やる気がないということは決してなくて、朝よく寝て、訓練はしっかり頑張る、隠れたところで一生懸命勉強している患者だった」 加藤雄大医師: 「学生時代の友達が、けがしても車いすで医師をしている方もいると調べてくれたり、まだまだできることがあるんじゃないかと励ましてもらって」
自身の経験を生かし
リハビリと受験勉強に励んだ加藤さん。翌年、医師の国家試験にみごと合格。 さまざまな診療科がある中、「リハビリテーション科」の医師を目指した。 加藤雄大医師: 「一度失ってしまっても、まだ取り返せる手段はあると身をもって実感した。患者の助けになる、力になれる領域だなと思っている」 加藤さんは、信大附属病院などで経験を積み2023年、かつて患者として通った「センター」に医師として戻ってきた。 5月15日ー。 朝8時半、加藤さんは車で出勤。 「センター」は、病院と障がい者支援施設が同じ建物にあり、医療ケアから生活復帰、職業訓練などを総合的に行っている。 県内唯一の障がい者のための自動車運転訓練施設。加藤さんもここで練習した。 運転訓練を担当・永瀬理恵さん: 「(加藤さんは)すごく優秀で、すぐ操作を取得して、路上にもすぐ出られました。実質8時間程度しか乗っていない」 運転の訓練を再現してもらった。運転席に移ったら15kgほどある車いすを持ち上げて後部座席に。 加藤雄大医師: 「(普通の車との違いは?)アクセル・ブレーキをこの(左の)ハンドルで連動させている。押し込みがブレーキで、手前に引くとアクセル」 ウインカーやハザードは左のハンドルにあり、右手のハンドルには片手で運転できるノブが付いている。 行動範囲を広げる車の運転。センターでも重要な訓練の一つだ。 加藤雄大医師: 「車で移動して社会に出られるとわかって、本当にできると実感したときはうれしかった」