A評価は2人。名スカウトが選ぶ、この夏甲子園で見ておくべきドラフトの逸材
台風の影響で開幕が1日順延された夏の甲子園がいよいよ明日8日開幕する。高校野球ファンに混じってネット裏には、真っ黒に日焼けした各球団のスカウトがスピードガンを用意して勢揃い、49代表の中には、今秋のドラフト候補が顔を並べる。 かつて、その席にヤクルトのスカウト部長として座っていた名スカウトの片岡宏雄さんは「春から夏にかけて高校生は一番変わるし伸びる。その成長度に加えて、心技体をどう調整するかの能力をチェックする場所が、夏の甲子園。火事場の馬鹿力が出る場所なので誤魔化されないようにしなければならないが、勝負強さや、プロとして一番大切な気持ちの部分を見ることができるのも夏の甲子園なんだ」と、この大会が、プロ側から見てどんな位置付けにあるのかを教えてくれた。 片岡さんが、「AからC評価まで、これだけ見ておけば大丈夫」と、選んだ候補リストを別表に掲載したが、「ただスカウトの世界で、いわゆるA評価をつけられ、間違いなくドラフトの1、2位で消えるのは2人。投の山下。打の増田だ」という。 名スカウトがA評価をつけたのは、木更津総合の左腕エース、山下輝と、横浜の4番、増田珠の2人だ。 「左腕の山下は、菊池雄星の高校時代より上のクラスだと思う。ここまで体作りに重点を置いたのか、春から大きく伸びた。ストレートの球威が増し、スライダーも腕の振りがほとんど同じで打者は戸惑う。カットやツーシームの小さな変化のボールも投げているようでコーナーに決まる。県大会で、3連投しても球威が落ちないスタミナも魅力。ピッチャーらしく、いつもマウンドで無表情を貫く姿勢も買える」 辛口の片岡さんが絶賛した山下は、ストレートは最速149キロで、スライダー、ツーシームを勝負球、カウント球に使える本格派の左腕。県大会では6試合に投げ、42イニングで47奪三振の三振率の高さが光る。早大に進んだ昨年のエース左腕、早川隆久譲りのコントロールの良さも即戦力に近い評価に変わっている。 木更津総合の初戦の相手は8年ぶり2度目の出場となる日本航空石川(10日・第一試合)。石川県大会の準決勝で名門の星稜を、5点差を引っくり返して延長11回に逆転サヨナラ勝ちした勝負強い打線が相手だ。 「左の清宮、右の増田と評していいくらいではないか。外野手としての守備もいいし総合力では清宮を上回っているのかもしれない。パンチ力があり、ヘッドスピードが早い。右手の使い方が上手いのが特徴で、ボールに食らいつく姿勢がいい。まだまだノビシロを感じる。プロのスピードに慣れたら3割30本は打つのではないか。私は、横浜DeNAで1番を打っている桑原をさらにスケールアップしたイメージを抱く。右打ちの大型野手は、なかなか出てこない。チーム事情によるが、どの球団も欲しいだろう。1位指名の素材だ」 横浜の増田は、体重が5キロ増えパワーアップ、神奈川県大会で4試合連発、個人最多タイの5本の本塁打を放った。打率は6割である。初戦の相手は、強豪の秀岳館。1回戦屈指の好カードとなったが、片岡さんは、「秀岳館には、川端、田浦という2人の好左腕がいるので、増田がどう対応するかが楽しみ。スカウトもこの対決には注目すると思う。ただこの2人の左腕は、素材はいいが、まだまだバラバラで完成度は低い。調子の波が、横浜戦でどうなっているか」と、力を見きわめる上でも注目の対戦だという。