EVが内燃車に追いつく日! 2026年、所有コストが同等に――バッテリー急落&中古拡大が生む大転換点とは?
リース満了が生むEV旋風
ゴールドマン・サックスによると、EV復活のポイントは2026年だが、その2年後の2028年にも 「さらに追い風が吹く可能性」 がある。というのも、その年にはリース契約が終了した多くのEVが中古車市場に大量に流入するからだ。 米市場調査会社「J.D.パワー」が2023年10月に発表した調査リポートによると、2028年にはリース契約が満了したEVが中古車市場に出回ると予測されている。 J.D.パワーの「E-Vision Intelligence Report」によれば、2023年には新車EVのリース台数が前年から355%増加し、2024年9月時点でさらに前年の88%増と驚異的な伸びを記録している。これにより、2026年にはリース返却されるEVの台数が 「230%増加」 する見込みだ。そのため、今後2年間で合計約28万台の中古EVが市場に登場することになる。
2028~2029年、中古EV市場の大波
リース契約が終了した後、ユーザーにはいくつかの選択肢がある。現在のリース契約を延長したり、リース終了後のEVを安く買い取ったりする人が多ければ、これらの中古EVが大量に中古車市場に流れることはないだろう。 しかし、リポートによるとそれは起こりそうにない。過去2年間、新車EVの価格は着実に下がっており、この傾向は今後も続くと予想されている。 ゼネラルモーターズは現在9台のEVを販売しているが、これらのモデルより手頃な価格のバージョンが複数台、近く販売される予定だ。さらに、BMW、ヒュンダイ、起亜、ステランティスなどからも低価格帯のEVが新たにラインアップに加わる見込みだ。 実際、個人が新車EVに支払う平均価格は現在3万5900ドル(約557万円)で、2年前の2022年に比べて4万8500ドル(約752万円)から大幅に下がっている。 また、コンパクトスポーツタイプ多目的車(SUV)などの平均的なEV車両のリース契約者にとって、契約を延長したり車両をローンで買い取ったりするよりも、同じカテゴリの新車EVをリースし直した方が月額費用が安くなると試算されているようだ。 新車価格の下落に加え、今後のEVへの税制優遇が不透明であることを考えると、多くのリース契約満了ユーザーが新車EVのリースを結び直すか、新車EVを購入する選択をすることになりそうだ。 さらに、現在EVを所有している人の94%が、次の車として 「再びEVを選ぶ可能性が高い」 と回答している。この事実を踏まえると、2026年頃から中古EVが市場に増え始め、その後2028年や2029年には、新車を選択した人々によって、さらに多くの中古EVが市場に出回るというシナリオが描かれる。
補助金消滅の行方
今後、EVのバッテリー価格や新車価格の下落に加え、非常に手頃な価格の中古EVが市場にあふれることで、2026年からEVシフトに追い風が吹く条件が一部で確実に整ってきそうだ。 ただし、補助金や税制優遇については不透明な部分が多く、それらが完全に撤廃された場合、市場が再び変化する可能性もあるだろう。 直近ではEVの普及が鈍化することは避けられないかもしれないが、2026年、そして2028年にEV市場がどのような動きを見せるのか、これからも注視しなければならない。
仲田しんじ(研究論文ウォッチャー)