《持ち給金「31円差」の意味》豊昇龍が足を滑らせて逃した“あまりにも大きい1勝” 優勝賞金1000万円、懸賞金144万円だけじゃない!「力士褒賞金」でも琴櫻と大差が
大関・琴櫻が悲願の初優勝を飾った大相撲九州場所。21年ぶりの大関相星決戦となり、豊昇龍をはたき込みで下して賜杯を手にした。優勝した琴櫻は来場所が綱取り場所となるが、敗れた豊昇龍も13勝2敗とレベルの高い準優勝ということで同時昇進の可能性を残した。 【大図解】幕内力士が手にするカネが一目瞭然の「給金番付」
とはいえ、優勝と準優勝とでは手にしたものが全く違う。大相撲では準優勝には賞金も賞品も出ない。負ければタダの人なのだ。表彰式は30分以上続き、琴櫻には数々のトロフィーや副賞が授与された。大関の豊昇龍には三賞(各200万円)の権利もないため、表彰式が始まると早々に支度部屋を引き上げて部屋の打ち上げパーティ会場に向かった。 では、豊昇龍は千秋楽の結びの一番に仕切り線で足を滑らせて敗れたことで、どれぐらいの賞金や賞品を逃したのか。
優勝賞金1000万円、結びの一番の懸賞金144万円が手にできず
表彰式は賜盃拝戴からはじまり、優勝旗授与、内閣総理大臣賞、NHK金杯、優勝額、モンゴル国総理大臣賞、アラブ首長国連邦友好杯、メキシコ合衆国友好楯、日仏友好杯、福岡市長賞、福岡県知事賞、大分県椎茸農協賞、宮崎県知事賞、大関賞、八女茶振興会賞と各賞の授与が続く。 副賞としてはアラブ首長国連邦友好杯のガソリン1年分、宮崎県知事賞の宮崎牛特選肉1頭分と果物・野菜1年分、大関賞の清酒4斗樽、福岡県知事賞の米・海苔・地鶏・イチゴなどブランド農産物1年分などが授与され、所属する部屋は大助かりとなる。 NHK金杯や優勝額はじめ、多くの賞で金一封がつく。最も高額なのは優勝旗につく幕内最高優勝の賞金1000万円だ。 加えて千秋楽の結びの一番には48本の懸賞金がついた。力士の手取りは3万円(残り3万円は所得税のための預かり金)として144万円だった。
琴櫻の持ち給金は36.5円アップ、豊昇龍は5.5円のみ
以上のものは優勝による「一時金」の扱いだが、力士を続けていくキャリアを通じての違いとなるのが「持ち給金」の差だ。琴櫻には持ち給金で幕内最高優勝の30円と、星13の勝ち越し分となる6.5円を合わせて36.5円の持ち給金が上乗せされる。 持ち給金とは本場所ごとに関取以上に支払われる手当の「力士褒賞金」を算出するための基準額。デビュー時の持ち給金はどの力士も3円で、1つの勝ち越しによって0.5円が加算されるなど増えていき、十両になれば一気に40円にジャンプアップ。持ち給金を4000倍した額が本場所ごとに支給されるかたちとなる。 つまり琴櫻は14勝1敗で幕内最高優勝をしたことで、持ち給金がプラス36.5円となり、これを4000倍した14万6000円が次の場所から支給される。持ち給金は加算制のため減ることはなく、1年(6場所)で87万6000円が引退するまで支払われる。優勝を逃した豊昇龍は13勝2敗となったことで、持ち給金は5.5円(星11の勝ち越し分)加算されるだけ。
現役を10年続けるなら力士褒賞金の差は744万円に
優勝した琴櫻とは持ち給金で31円の違いとなり、場所ごとの力士褒賞金として12万4000円少なくなる。1年で74万4000円、現役を10年続けると744万円の差となる。 九州場所を迎える前の琴櫻の持ち給金は109円(力士褒賞金は1場所で43万6000円)に対し、豊昇龍は129.5円(同51万8000円)だったが、場所を終えてこれが琴櫻145.5円、豊昇龍135円に逆転した格好だ。 豊昇龍の逃した1勝は大きかった。だが、来場所で優勝すれば横綱昇進のチャンスはある。もっと大きなものを手にしてもらいたい。