フランスの若者たちはもはやポルノなどのセックス表現に喜びを感じません
身分を隠して、2年間、娼婦として活動した作家の自伝小説を完全映画化した話題作『ラ・メゾン 小説家と娼婦』がいよいよ公開されます。アニサ・ボンヌフォン監督と主演を務めた女優アナ・ジラルドさんに話を伺いました。その後編です(前編はページ下【関連記事】からご覧ください)。 PEOPLE NOW
27歳の小説家エマ・ベッケルが娼婦として過ごした2年間を描いた自伝小説「ラ・メゾン」。世界16カ国でベストセラーとなったこの衝撃作が『ラ・メゾン 小説家と娼婦』として完全映画化されました。日本公開に先駆け、アニッサ・ボンヌフォン監督と主演女優のアナ・ジラルドさんが来日。ひとりの女性の欲望を赤裸々に描いた本作についてインタビューしました(映画の内容について語った前編はこちら)。後編では現代におけるセックスワークの問題、フランスにおけるセックス事情なども伺いました。
娼館の中では、分析するべきことがたくさんある
── セックスワーカーは世の中に必要だとお考えですか? アニッサ・ボンヌフォン監督(以下アニッサ) いずれにしても、いつも存在するものです。それが現実なんです。そうすると、どのように社会に溶け込ませるのかが大切になってきます。この職業はずっとありましたが、枠組みが作られ守られることがなかった。でも守られることが重要です。あと、私は思うに、障害のある人たちなど現実として必要としている人がいます。だから私はずっと存在していくものだと思います。 アナ・ジラルドさん(以下、アナ) 私もそう思います。映画の中でもセックスを必要としている男性が登場しました。ある意味で素晴らしい職業だと思いますが、娼婦たちはこうした男性の性的な衝動に応える。この職業やセックスが必要である本当の理由を探すのはとてもおもしろいと思いました。
── ファンタスム(性的興奮を掻き立てる妄想)を実現するために娼館にくる男性についてどう思いますか? アニッサ このような映画を制作したいなら、いいとか悪いとかあらゆる道徳的なジャッジから切り離して考えるべきだと思います。なぜなら、そうした裁きをしては人間性を語れないからです。この物語では、見つけるべき人間性がたくさんあります。異常な行動であっても何かを物語るのです。娼館の中では、分析するべきことがたくさんあります。そこにはたくさんの鍵があると思います。私は女性として思うのですが、男性に(女性に対する)リスペクトの気持ちがあるなら理解します。 アナ 娼館の外の世界で辛いことがあって慰めを求めてやってくる男性や、お金を払って愛を得る方が気が休まる男性、コンプレックスや臆病さを抱えている男性に心を打たれました。私も男性にリスペクトする気持ちがあるならいいのではないかと思います。 ── フランスでは男性たちからはどんな反応がありましたか? アニッサ フランスでは女性から多くの反響がありました。映画を見て力を得たと。男性からの反応は、おもしろくて、彼らはまるで少年のようでした。女性に属した世界に入ってしまったかのようだと言っていました。男性たちは娼婦が彼らの世界に属していると考えていたのですが、この映画では逆だったわけです。男性たちは、女性たちが強くて大きい存在だと感じたようです。私はそれが素晴らしいと思いました。