オートレーサー森且行「僕の中では、特別中の特別な存在です」ヘルメットに描かれた6色の星に込められた本当の意味
このとき、森さんは兄の森久典さんに「兄貴、俺、頑張ったよな。引退してもいいかな」と初めて弱音を口にした(本編より)。しかし、その麻痺をカバーする方向へと考えを切り替えていく。 「麻痺の残る足と向き合っていくには先生に補える筋肉はどこか、またどういう乗り方がいいのか、ここに力を入れるにはどこを鍛えればよいのか相談しました」 ――そうした性格はケガ前から持っていたものですか? 「そうですね。諦めない往生際の悪さ(笑)。そこが普通だったら、デビューから20年以上経って日本一になんかなれないです。でもそれもね、どうしても日本一になりたかったからかな。約束を守りたかったから」
グループ脱退のときにメンバーに誓った約束
森さんは、グループ脱退の際にSMAPのメンバー全員に「必ず日本一のオートレーサーになる。お互い日本一になろう」と誓い、24年後の46歳のときに、その約束を果たした。 ――ところで、かつて森さんは「僕の友達は5人以外にいません」と・・・。 「『27時間テレビ』(2014)の特番で放送された手紙に書いたものですね」 ――(即答に驚きながら)そうです。森さんにとって5人はグループのメンバーというより「友達」という認識ですか? 「両方です。友達でありメンバーであり。友達だけでなく、一緒に働いてきた仲間であって・・・。いや、どっちとは言えないな。特別な存在ですね。僕の中では、特別中の特別な存在です」 ――森さんがレースで身に着けているヘルメットについても伺いたいのですが。SMAPを意味する星マークが描かれています。一緒にいる感覚になるのでしょうか。 「勇気が湧くし、力が出て落ち着きます。緊張してきたなというときに、その星と色を見ると、みんなのことが頭に浮かんで“よし、落ち着こう”という気持ちになれるんです」 ――それはずっと前からですか? 「はい、そうです」 6色で彩られた星に支えられ、森さんはオーバル(楕円形のコース)を走る。 森且行(もり・かつゆき) 1974年2月19日、東京都出身。川口オートレース所属。96年、トップアイドルグループ「SMAP」からオートレーサーへ転身し、 97年にデビュー戦で勝利。翌年には新人王に輝く。7年目にG2、13年目にG1を制覇し、同年、所属する川口オートでランキング1位となった。 2020年11月にはSG日本選手権で優勝し、日本一を達成するが、その82日後に落車により、命が危ぶまれるほどの大けがを負う。5度の大手術と壮絶なリハビリを耐え抜き、2023年4月、奇跡の復帰を果たした。3年間を追ったドキュメンタリー『オートレーサー森且行 ー約束のオーバル ー劇場版』が11月29日(金)より公開。 望月ふみ
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