東京とイギリス湖水地方を舞台に、家族の絆を描くロードムービー!「コットンテール」
妻の最後の願いを叶えるため、東京からイギリス湖水地方へと旅する家族を描いた、リリー・フランキー主演、パトリック・ディキンソン監督による日英合作のロードムービー「コットンテール」のBlu-rayが、10月2日に発売される。錦戸亮、木村多江、高梨臨が主人公を取り巻く家族を演じ、イギリスの美しい自然を背景に夫婦や家族の絆を映し出した、第18回ローマ国際映画祭の最優秀初長編作品賞に輝いた感動作だ。
リリー・フランキーが、亡き妻を愛する主人公を好演
主人公は60代の作家・大島兼三郎(リリー・フランキー)。最愛の妻・明子(木村多江)を亡くした彼は、寺の住職から生前に明子から託されたという一通の手紙を受け取る。そこには少女時代に明子が訪れて愛した場所、イギリスのウィンダミア湖に自分の遺灰をまいてほしいという最後の願いが書かれていた。兼三郎は遺言を叶えるため、息子の慧(錦戸亮)と妻のさつき(高梨臨)、4歳の孫娘エミと共にイギリスへと旅立った。だが長らく疎遠だった兼三郎と慧はロンドンでも事あるごとに衝突し、兼三郎は慧たちに内緒で単身、ウィンダミア湖を目指して旅に出る。しかし電車を乗り間違えた彼は、道に迷ってしまう。 この映画は、脚本も兼ねたパトリック・ディキンソン監督が10年来温めていた企画で、彼の故郷であるイギリスを主な舞台にしながら、人付き合いが不器用な日本の家族の関係性を描くことで、国境の垣根を飛び越えた人間ドラマになっている。妻への深い愛情を持ち、だからこそ認知症が進んで亡くなった彼女に何もしてやれなかったという悔いが残る兼三郎。息子の慧に対しては、いつもかける言葉が足りず、我がままで不機嫌に見える彼だが、その胸のうちには明子との様々な思い出が溢れている。本当は優しいが、家族との心の距離がうまく取れない父親を、リリー・フランキーが絶妙のさじ加減で表現している。
「ぐるりのこと。」に続く、木村多江との夫婦役が絶妙
その兼三郎を長年支えてきた明子を演じる木村多江も印象的。彼女とリリー・フランキーは、共に映画初主演だった「ぐるりのこと。」(2008年)でも夫婦を演じていて、特典映像のキャスト・インタビューで木村多江が言っているが、あの映画で時間をかけて夫婦の雰囲気を作っていったので、今回はすぐに夫婦の感じになれたとか。またここでの認知症になった明子を献身的に介護する兼三郎は、「ぐるりのこと。」で子供を亡くしてうつ状態になった翔子(木村)を静かに見守るカナオ(リリー)の夫婦関係を思わせる部分もあり、この二人にしか出せない連れ添う者同士の空気感が夫婦のシーンを豊かなものにしている。 また父親のことが好きなのに、ボタンを掛け違えたような会話しかできない息子・慧に扮した錦戸亮、心を開かない舅の兼三郎に苛立ちを隠せないさつき役の高梨臨とのぎくしゃくした親子関係も、ロードムービーの味付けとしてうまく効いている。