不要になった繁殖犬を「埋めてるんだ」「農薬使ってんだよ」劣悪な環境で犬を育てるブリーダーの“残酷な実態”
「かわいそうという気持ちは常に消えない」
こうして常に20~30匹程度の子犬が産まれている状態を作りだし、子犬が生後50日になると、取引先のペットショップに出荷する。一部の子犬は自店で直接販売したり、競り市(ペットオークション)に出品したりもする。 子犬を出荷するタイミングが早すぎることは、理解している。 「子犬がペットショップに行くと、夜は従業員がいないなかで1匹だけで過ごすことになる。だから本当は、体つきがしっかりしてきて、ご飯も1匹でちゃんと食べられるようになる生後60日くらいのほうがいいに決まっている」 だがコストや出荷価格を考えると、2012年に成立した改正動物愛護法が規制する下限の生後50日で子犬を出荷せざるを得ないという。 「いまは何でも小さいのがもてはやされる世の中ですから。体が大きくなると値段が落ちてしまう。特に小型犬以外の犬種だとそれが顕著で、市場(競り市)での落札価格は10万円くらい変わってくる」。改正動物愛護法が施行される以前は、生後36日前後で出荷するのが当たり前だったという。 犬たちに生活を支えられている自覚はある。「私たちは犬に生かされている。心から感謝している」と、繰り返し話す。それでも狭いケージに入れっぱなしで飼い、無理やり交配させ、母犬からさっさと子犬を取り上げる――。 「かわいそうという気持ちは常に消えない。十分にわかっている。だから最低限のことはやっているのです」。主に繁殖用の雌犬について、早めに引退させることなどにこだわりを見せる。
「犬を使い倒す」業者たち
繁殖業者のなかには、母体がボロボロになり、繁殖能力が衰えるまで繁殖を続けさせるところが少なくない。そうなってから引退させても、もう、犬らしい生活を楽しむことは難しい。「ブリーダーのところにいる犬たちに、家庭犬のような幸せはない。だからなるべく早く引退させて、普通の家庭で幸せになってほしいのです」。引退させた犬たちは動物愛護団体に譲渡し、新たな飼い主を探してもらっているという。 女性なりに最善を尽くしている一方で、同業者の劣悪な飼育事情を見聞きすることも多いと、眉をひそめる。ある繁殖業者は、脚に問題があって売れない子犬を、動物病院に持ち込んで安楽死させようとした。 また別の繁殖業者は、不要になった繁殖犬を「埋めてるんだ」と話した。女性が「どうやってるの?」と尋ねると、「農薬使ってんだよ」と明かしたという。 繁殖犬の早い引退をすすめても、耳を貸そうとする同業者はほとんどいない。「8歳くらいならぜんぜん平気だよ」と話し、犬が歩けなくなっても繁殖させ続け、「年を取った犬を使い倒す」繁殖業者は少なくない。 ケージや施設内をほとんど掃除せず、毛や糞尿だらけの環境で飼っている繁殖業者もいる。犬種がわからないほど汚れていたり、体中に毛玉ができたりしたまま放っておく繁殖業者もいる。女性はこう話す。 「犬はお金になって、それで生活していけるから仕事を続けているのだろうけど、劣悪な飼育環境で繁殖を続けているブリーダーは本当にやめてほしい。そもそも、そういう劣悪なブリーダーを、行政はしっかり取り締まるべきです。また市場も、出入りしているブリーダーをすべて検査したうえで、出入りできる基準を厳しく決めればいい。そのうえで、私たちブリーダーは次の段階にいかないといけない。私自身は、できることはやっているつもりですが、ほかに改善できることがあるなら直したい。どうすればいいのか、国や行政に教えてもらいたい」
太田 匡彦/Webオリジナル(外部転載)
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