「住宅ローンは繰り上げ返済するな!」税のプロがキッパリ言い切る意外な理由
親が持っている不動産をいずれ相続する見込みがある場合、まず準備しておくことは何だろうか。相続税額をどうカットするかは、相続人たちの最大の関心事だが、それを左右する決定的な書類について、実は多くの人は関心が低い。親が健在なうちにしっかり用意しておくべきその重要書類とは……!?※本稿は、内藤 克『残念な相続〈令和新版〉』(日経プレミアシリーズ)の一部を抜粋・編集したものです。 【マンガ】住宅ローンは繰り上げ返済するな!「残高たっぷり」の私が断言するワケ ● 相続対策でもっとも重要なのは 「納税資金を準備」すること 私は「住宅ローンはなるべく繰り上げ返済しないほうがいい」と考えています。それが相続人自身が実行できる数少ない納税資金対策だからです。 一般的に相続対策というと、財産を残す親などが中心となって行うものです。財産を持っている本人が動き出さない限り、周りがいくら騒いでも始まらないからです。所得税の節税対策はご本人の手取りが増える効果があるためすぐに実行するのですが、相続対策のほうはご本人が相続税を納めるわけではないため、なかなか重い腰を上げようとしないのです。 そして相続対策というと、まず「節税」を思い浮かべるものですが、これは間違い。実は一番初めに行うべきなのは「納税資金の準備」なのです。相続税の納付は財産を取得した相続人が行わなければなりませんが、すぐに現金化しにくい不動産を相続した場合など、手元に納税資金がないと大変なことになります。 一方、納付は必ずしも相続した財産で行う必要はなく、もともと自分がためていた財産で納付してもかまわないのです。逆にいえば、自分で納税資金の準備ができているのであれば、不動産ばかりを相続しても納付で苦労することはないわけです。
● 住宅ローンにより 納税資金の確保を そして、実は自分自身で納税資金(流動資産)を増やすのに一番手軽な方法は「住宅ローンの活用」です。 ほとんどの方は自宅を購入する際、頭金を多く入れてなるべくお金を借りずに購入しようとしますが、相続の観点でいえば、仮にお金に余裕があっても住宅ローンを活用すべきなのです。特に超低金利時代には有効な方法です。 仮に5000万円の土地を兄と弟の2人で分けるとしましょう。このとき、2分の1ずつの取得にしてしまうと将来売却する・しないなどで意見が合わなくなると困るので、兄がその土地を100%取得する代わりに、兄から弟に2500万円のお金を払う分割方法がよく用いられます。 このような分割を「代償分割」といい、弟に払った2500万円に対しては贈与税がかかりません。兄も弟も2500万円の財産を取得したことになり、それぞれが相続税を払えばいいのです。このような場合、兄がマイホームの購入を現金で行っていたら弟に払うお金が足りなくて困りますが、ローンを活用して手元資金を潤沢に持っていれば、そのお金で対応可能です。 ローンを組んだ後も同じこと。「少しお金がたまったから」とすぐに繰り上げ返済する方も多いのですが、返済せずに手持ち資金を残していれば、それも納税資金として使えます。