「便利」だけでは済まない 気軽に「退職代行を使う人」が知らない残酷な社会の現実
もはや、この時期特有の五月病によるものではなく、社会現象と言っていいかもしれません。ゴールデンウィーク前から現在にかけて退職代行サービスを使う人が続出し、テレビやネットでその詳細が報じられ続けています。 特にテレビでは「連日どこかの番組が扱っている」という状態。朝から夕方までの情報番組に加えて、夜の「報道ステーション」(テレビ朝日系)や「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京系)、さらには地方局やBS局までがこの話題を扱っています。
■すでに100社以上ある退職代行の活況 「すでに100社以上」と言われる退職代行サービスの中で、最もメディアにピックアップされているのが、ユニークなネーミングの「モームリ」。 利用料が正社員2万2000円(税込)という同サービスは、依頼者に代わって勤務先に退職の意向を連絡するほか、必要な手続きも代行。2名の弁護士が監修し、労働環境改善組合と提携していることもあって、4月だけで過去最多の1397件(うち新卒208人)の依頼があり、連休中や連休明けも数百件単位での問い合わせがあるようです。
退職代行サービスそのものは2010年代後半あたりから何度かSNSやメディアで話題になっていましたが、今回の動きはそれを大きく上回るものと言っていいでしょう。もちろん同サービスの利用者は、まだ一部の人々に過ぎないものの、「退職のスタンダードになっていく」という見方もあります。 現在ネット上の記事やSNSは、退職代行サービスについて「便利」「合理的」「需要がある」などの肯定的な声から、「ずるい」「マナー違反」「ありえない」などの否定的な声まで、さまざまなコメントが飛び交っている状態。しかし、そのどちらでもなく、「危うい」と思わせられるいくつかのポイントがあるのです。
まず退職代行サービスを利用する人の主な退職理由からあげていきましょう。 最も多いと言われているのが、人間関係、仕事内容、待遇の3つ。 人間関係は「上司や同僚と合わない」「ハラスメントを受けた」、仕事内容は「希望の部署ではなかった」「やりたい仕事ではなかった」、待遇は「給与が低かった」「残業が多く休日が少なかった」などの理由が退職代行サービスを利用する理由として語られているほか、悩み相談のコンサルをしている私のもとにも同様の声が届いています。