著者である医師・作家の久坂部羊さん

日本は今、「人生100年」と言われる長寿国になりましたが、その百年間をずっと幸せに生きることは、必ずしも容易ではありません。人生には、さまざまな困難が待ち受けています。 【写真】じつはこんなに高い…「うつ」になる「65歳以上の高齢者」の「衝撃の割合」 『人はどう悩むのか』(講談社現代新書)では、各ライフステージに潜む悩みを年代ごとに解説しています。ふつうは時系列に沿って、生まれたときからスタートしますが、本書では逆に高齢者の側からたどっています。 本記事では、せっかくの人生を気分よく過ごすためにはどうすればよいのか、『人はどう悩むのか』(講談社現代新書)の内容を抜粋、編集して紹介します。

職場で心の健康を損ねやすいタイプ

著者である医師・作家の久坂部羊さん

ここ(「本格的な「うつ病」になってしまうことも…職場で精神の健康を害すると発症する危険な「9つの症候群」」の記事)にあげたさまざまな症候群は、もちろん名前がつく以前から存在していて、かつては甘えとか、非常識とか、自分勝手で片付けられていたものがほとんどです。 それが精神の健康被害だと認められるようになったのは、時代の変化による優しさでしょう。 優しさは大事だし必要ですが、ときに甘やかしと紙一重になる危険があります。弱い人が傷つくことを恐れ、優しく許容的に寄り添ってばかりいると、その人が自分の弱さを克服する機会を奪ってしまうことにもなりかねません。 だからといって、スパルタ式の厳しさで対応をすると、以前の理解のない状況にもどってしまうので、バランスがむずかしいところです。 職場で心の健康を損ねやすいタイプとしては、次のような特徴があげられます。 ・状況に不満を抱きやすい。 ・状況を克服する力が弱い。 ・理想と現実のギャップを受け入れられない。 ・自分の能力について、自己認識がズレている。 ・人格形成が未熟。 ・主体性がなく、気弱で自分の意思や意見を言えない。 ・周囲に悩みや問題を相談できる相手がいない。 ・他人の評価や、人から言われたことを常に気にする。 ・他人との競争を過剰に意識する。 ・何かが気になると、そのことばかり考えてしまう。 ・完璧主義。 ・気分転換が下手。 ・繊細で傷つきやすい。 逆に考えると、鈍感で優秀で他人を気にせず、堂々と我が道を行くタイプが心の健康を保ちやすいといえます。 もうひとつ、人が心の健康を害するのは、思いがけないつらさに直面したときです。 現実が期待通りでないとき、その原因は現実にある場合もあるでしょうが、期待する側に問題がある場合も少なくありません。つまり期待値が高すぎるということです。見通しが甘いといってもいいでしょう。 安易な気持ちやいい加減な心構えで職場に入ると、現実の厳しさ、過酷さ、理不尽さに傷つき、精神の健康を害する危険が高まります。はじめからつらい状況を覚悟して、現実がそれほどでなければ、傷つくことも少ないでしょう。 であれば、職場に入る前にはできるだけ厳しい状況を想定して、苦しむのは当たり前、給料はその我慢料と心得ておくことで、精神的にタフになれるはずです。 さらに連載記事<じつは「65歳以上高齢者」の「6~7人に一人」が「うつ」になっているという「衝撃的な事実」>では、高齢者がうつになりやすい理由と、その症状について詳しく解説しています。