クレイジーケンバンド・横山剣が「何も毎年出すことはないんじゃないの」と言われてもアルバムを出し続ける理由とは?
新しい血を導入しながら、60代を疾走
バンドを率いる横山は、ライブに足を運ぶそうしたファンの実像を、どのように捉えているのだろう。 「ステージから見る限り‥‥というのはウソで(笑)、ファンクラブ会員のデータでも確認していますが、年齢的には50代が中心ですね。女性ファンもずいぶん増えてきました」 曲作りをする際に、ファンの年齢性別を意識することはあるのか。 「作る時には、それはありません。もう作りたいものを作っているだけです。まあ作る当の本人が64歳なので、64歳の今というものが放っておいても曲に出てくる。若い人から見たら『そんな世界は分からない』という部分も多々あると思いますが、その分だけ同世代には共感してもらえるのかもしれませんね」 11人のバンドメンバーも横山を筆頭に、長年活動を共にしてきた50代後半から60代がほとんど。ファンとも一致する年齢構成だが、ここ数年の間に、ボーカルとドラムに30代の新メンバーが加わった。バンド内に変化はあったのだろうか。 「やはり音楽的には影響がありました。例えばアイシャさん(ボーカル)とは、聞いている音楽、好きな音楽は一緒だったりするんですが、聞き方のセンスが僕ら世代とは違う。1990年代のレア・グルーブとも共通するような、古い曲をまるで新曲のように聞ける感覚、それが僕ら世代にとってはすごく新鮮でした」 新しい血を導入しながら、60代を疾走するクレイジーケンバンド。横山はこの先の活動について、どんなイメージを持っているのか。 「お先真っ暗(笑)、ってわけじゃないんだけど、正直先はまったく読めません。だから、やれるうちにやれることをやっとかないと後悔するぞ、と思っています。毎年アルバムを出すのもそういうこと。もし20代、30代だったら3年ほど間を空けてみようとか、5年ぐらい休憩してみようとか、そんなことができるのかもしれないけど、なにしろデビューが37歳の自分は、その間に死んでしまうかもしれない(笑)。スタッフとかお客さんからは、何も毎年出すことはないんじゃないの、なんて言われるんですが、そんな時はすぐに、ジャズの渡辺貞夫さんの名前を出すんです。あの人は90歳を過ぎても、毎年アルバムを出してますからね」 同年代のファンに支えられる遅咲きバンドの最盛期は、まだまだ先なのかもしれない。 ******* ここからは、往年のファンも若いファンも虜にする、クレイジーケンバンドの「昭和的」魅力についての話に。横山剣が語る、昭和の「かっこよさ」とは? 第2回【かっこよくて不適切「昭和の復権」を予言していた「クレイジーケンバンド」の凄み】を読む yom yom 2024年10月4日掲載
新潮社